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冬は人恋しくなる。そんなフレーズをテレビなんかで毎年聞いていた気がするけど、今年はそれに頷いてしまう冬になった。マフラーに顔をうずめ、ポケットで手を暖める。受験と卒業を目前に控え、私は周囲に取り残されていた。所詮、人はひとりなんだ。相変わらず、私は変わらない。



「結衣、今日はカラオケ行こうよ」
「そんで帰りにレストランで勉強しよ!」
「ほらほら結衣、早く早く」



私の仲の良い友達も相変わらず。廊下で待ってるよというみんなの声を残して、私はゆっくりと帰り支度をしていた。
毎日が、もどかしい。今までこんな思いしたことなかったのに。訳もなく涙が溢れそうになる。堪えることにも慣れた。臆病な私は、強がることばかり覚えていく。器用になれたらいいのに。また、そう思うようになってしまった。



「結衣、まだー?」
『今行く』



鞄のチャックに指をかけたところで、前が影で覆われたことに気付く。ゆっくりと顔を上げると、あの頃と変わらない白石くんが目の前に立っていた。声を出そうにも喉が震えている。あれから、何事もなかったかのように私たちは他人に戻った。少しの恐怖を抱えながら私も笑ってみる。



「これ」
『…うん』
「高原さんに。ほんなら気ぃつけて帰りな」



そうして差し出されたのは白い封筒。長い間、口もきいてなかったからうまく返事ができなかった。久し振りに間近で聞いた白石くんの声に、また涙が溢れそうになる。白石くん。好きだよ、大好きだよ。私、やっぱり貴方を忘れることなんてできないよ。



『白石くんっ…!』
「また明日。高原さん」



卒業のときを迎えたら、躊躇うことなく春はやってくる。そして振り返りもしないで白石くんは教室を出ていく。背中越しに左手をひらひらと振って。ちゃんと謝りたかった。今度は逃げずに、面と向かって。
私、こんなに泣き虫じゃなかったのに。白石くんに恋をしていなければ、こんなもどかしい痛みも知らずにいたのに。


言葉にならない想い


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