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それから、いろいろと私なりに葛藤した。真実を告げるなんて決して楽じゃない。だけどこのまま白石くんと一緒にいることは、私自信が許したくないのだ。自分で撒いた種だ。後悔とは違う、でも似たような何かが私を支配していた。
嫌われることは構わなかった。また白石くんを傷付けてしまうこと。それが一番辛い。きっと彼は笑うだろうから。私を責めたりなんてしないと思う。



「風がひんやりすんなー。高原さん、寒ない?」



白石くんの声で我にかえった。放課後に屋上に立ち寄ろうと誘ってみると白石くんは快く承諾してくれた。11月を目前にした屋上はやはり寒かった。



『あの、白石くん』
「…」
『私っ』



次の言葉が出てこない。白石くんに告白したときみたいに、与えられた台本を読むように。そうして残酷な真実を伝えようと思ってたのに。
やっぱり私は変わってしまったんだ。別れようと、白石くんのことを考えれば考えるほど好きになってく。でも、今更好きになっても遅いのだ。そう冷たく自分に言い聞かせた。



『本当は白石くんのこと、好きじゃないの』
「…高原さん」
『ごめんなさい。白石くんのこと、騙してた。だから…』



さよなら。その言葉だけ飲み込んでしまった。辛いよ、白石くん。蒼い空をバックに、白石くんは悲しいというより切ない表情をしていた。少し意外だった。驚いていない、そんな感じ。どういうこと、だろう。








「やっと、話してくれた」





悲しい表情のまま、白石くんは笑った。驚いたのは私のほう。白石くんの儚い笑顔は私の胸を強く強く締め付けた。澄んだ空気を深く吸い込んでみても、やはり心は落ち着かない。



「知っててん。高原さんが罰ゲームで俺と付き合うてくれてるってこと」
『そんな。どうして…』
「いつも見てたから。たとえ偽りの関係やったとしても、高原さんの側に少しでもおれるならって思った」



あの日、既に白石くんは知ってたんだ。私に課せられたミッション。その内容まで。真実は残酷だ。私の犯した罪は、私が思っているより遥かに重い。罪の重さを理解したところで、言葉が出てこない。謝罪したところで許されるどころか、きっともうどうにもならない。



「短い間でも、高原さんを独り占めできたみたいで嬉しかった。嘘でも、好きやて言ってもらえて」
『白石くんっ』
「幸せやったから。ほんまに…」





気が付いたときにはもう白石くんに背を向けていた。ただただ涙を堪えて階段を駆け降りる。白石くんの涙を必死に堪えた姿が脳裏に焼き付いて離れない。思うより傷付けていた。思うより残酷だった。思うより、彼を好きになっていた。



『好きっ…』



涙で視界が滲んでる。白石くんを好きになって、この世界を好きになれたというのに。白石くんと一緒じゃないと、世界がこんなにも霞んで見える。私だって変わりたかった。白石くんのように、輝いてみたかった。恋ってこんなに涙で溢れるものなんだ。そんな言葉にならない想いを抱えながらみんな恋をしている。そうして私のはじめての恋は幻のように、思い出に変わってく。


遥か舞い散る


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