04


紙をきれいに重ねて、ホッチキスで束ねてく。こういう単純作業は嫌いじゃない。トントン、パチパチといった音さえ心を落ち着かせる。寧ろ心が暖まるような感じさえしてならないのだ。独りでいるのが嫌いでない私にピッタリの作業を、担任は与えてくれたと思う。
来月行われる体育大会のしおりを人数分作る。担任ももうすぐ様子を見に来てくれる頃だろうと考えたその時、教室の扉が開いた。放課後の校舎は静かで、扉の開く音ですら心地良く感じた。



「あれ、西岡さん」



担任かと思えば教室に入ってきたのは白石くんだった。部活は休みなのかな。瞬時にそんなことを考えてしまう私は、常時白石くんのことを考えてるに等しいからなのか。好きすぎて、ついため息が出そう。



「居残り?」
『担任に頼まれて。体育大会のしおり作ってる』



手伝うよ。白石くんはそう言って前の席に腰掛けた。いつもと違うのは、椅子ごと後ろを向いているということ。平常心を保ててるのか気になるところだけど、白石くんはそんな中でも私に会話を振ってくれていた。
白石くんはさっきまで図書室で勉強していたらしい。部活が休みの放課後は大抵そうしていると話してくれた。一人でするより遥かにはかどる作業。気が付けば、最後のワンセットを白石くんがホッチキスを掛けているところだった。



「西岡さんありがとー。ってあれ、もう終わったんだ!」



担任が教室に入ってきた頃にはもう作業は終わっていた。凄い!偉い!と感極まっている担任に白石くんも手伝ってくれたと伝えると、担任は白石くんの頭をよしよしと撫でた。



「優しいね、白石くん。優しい男の子はポイント高いぞ。ね、西岡さん」
『へ?』
「ちょっと先生、西岡さんが困ってるやん。やめたってやー」



仲睦まじく話している白石くんと先生。見ている私まで笑顔が移りそうになるくらいだった。私なんかより、ずっと白石くんと仲が良い先生。羨ましいを通り越えて、神がかって見えた。



「本当にありがとう!二人とも、気を付けて帰ってね」
「あ、先生。しおり職員室まで運ぼか?」
「大丈夫。そのくらい先生がします。西岡さんも、それじゃあね」
『さようなら』



先生が教室から出ていくのを見送って、鞄を持ち上げる。夕暮れの空を飛ぶカラスが鳴いたとき、動こうともしない白石くんに気が付いた。その白石くんの目は、いつもの優しい目ではなく、少し苦しそうな目をしていた。白石くん、名前を呼ぶと彼はハッとしてこちらに視線を送ってくれた。



「途中まで、一緒に帰ろか」



切なさを隠すように、白石くんは笑った。もしかして、白石くん。胸のざわつきを隠して、白石くんと教室を後にした。

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