02


今月の私の運勢はきっと最高に良いと思う。白石くんの後ろ姿を誰にも気付かれることなく見つめ続けることが出来るんだから。



「おはよう。西岡さん」



こうして挨拶してもらえちゃったり。急激に跳ね上がる心拍数を隠すのがやっとの私は、無愛想におはようとだけ白石くんの目も見ずに返事してしまった。窓から覗いてる四角く切り取られた空に視線をやると、なんだか虚しくなった。

折角話し掛けてくれたのに。
折角挨拶してもらえたのに。

静かにため息をついて前を向くと、白石くんはまだ私の方を向いていた。うそ。声を出そうにも喉が震える。白石くんの綺麗な髪が風とともに揺れる。



「前から思っててんけどな」
『な、なに』
「西岡さんって、格好いいよな」



どうして。格好いい人に格好いいなんて言われなきゃいけないの。白石くんだからか、不思議と悪い気はしないけど、それにしても複雑だ。可愛くないのはわかってる。でも、格好いいなんて。



『意味わかんない』
「自分をしっかり持ってる感じでさ、いいなあ」



好きという気持ちが溢れ出す。こんな性格だからか、同じクラスの男子もあまり話し掛けてこないのに。それがどうだってことないんだけど、白石くんにそこまで悪い印象を与えてなかったなら、それはそれで嬉しいことだ。



『別に。そんなことない、けど』
「またまた謙遜してー。ちょっと羨ましいわ」
『白石くん、先生来たよ』



私の忠告も白石くんには届かず、担任が教室に入ってきたにも関わらず白石くんは堂々と後ろを向いて私に話し掛けている。担任の視線が、最早白石くんに釘付けになっているのに私は気付いていながら、白石くんの話に適当に相槌をうっている振りをした。



「こら、白石くん。前向いてー」
「ん、しゃーないなあ。先生の為に前向いたろか。ほんなら西岡さん、また相手してな」
『えっ…』



私の返事も聞かずに白石くんは前を向いてしまった。また、白石くんの背中が視界に映る。それだけで、ひどく心が落ち着いて安心するのだ。ひとり静かに呼吸を整え、まるでさっきまでとは違う世界にいるような自分を、元の世界に連れ戻した。

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