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それからの白石くんは少しだけ変わったような感じがした。体調不良から復活した私に一番におはようと言いに来てくれたのも、移動教室に行こうと誘ってくれたのも、お弁当を食べようと誘ってくれるのも白石くんだった。
こうして、白石くんの部活が休みな日も一緒に帰ろうと誘ってもらえた。気にならない訳じゃない。でも、聞きたくても聞けないのだ。私の口から、疑問として言葉に変えてはいけない気がしてならなかったから。



「雨、あがってよかったなあ」



白石くんはこうして、いつも他愛のない話をしてくれる。後輩の男の子の話や、家族とのやりとりや休日の過ごし方。私には大切な話ばかりで、一語たりとも聞き逃さないように必死だったりする。



『私ね、雨上がりの晴れが一番好きなの』
「へえ。なんで?」
『なんだか心が軽くなる。モヤモヤしてた気持ちとか、水溜まりが太陽の光に照らされて眩しくて』
「そっか…」



こうして迎える少しの沈黙。今の話題つまんなかったかな。違う話すればよかったかも。不安と少しの後悔が頭をよぎる。口下手な自分が恨めしい。もっと面白い話ができたらよかったのに。
白石くんを横目で見ると、難しい顔をしていた。謝ろうか、とっさにそう思ったとき白石くんが足を止めた。



「大人な接し方しようと思ってたけど、そろそろ限界やわ…」
『…え?』



どうしよう、俯く白石くんを前に掛けるべき言葉が思い浮かばない。いつもと様子も違いすぎるし何よりどうしてこうなってしまっているのかわからない。



『し、白石く
「なんでそんな爽やかなん西岡さん!ってゆうか、なんであの人とどーなったって聞いてくれへんの!」
『ご、ごめん』



こんな感情むき出しの白石くん初めて見たから、ついポカンとしてしまった。白石くんもこんな表情するんだ。



「思ったより元気やと思わへん?それとも空元気やと思ってんの?」
『ごめん、それもわかんない』



必死な白石くんを見てると、何だか笑えて仕方なかった。私はと言うと、不思議な気持ち。ワクワクして、ドキドキして。白石くんといると、ずっとこんな気持ちを味わえるのかなと考えたりしていた。さっきまでの不安が嘘のよう。



「西岡さんがおるから、俺
『だいすき』
「そんなん」



ずるいわ。そう呟き、顔を真っ赤にしながら目をそらす白石くん。いつからだろう、私が白石くんのことを好きになったのは。こんなに、近付きたいと思ったのは。



「俺、こんなんじゃ、あの人のこと好きやなかったみたいやんか…」
『ううん、白石くんは本気だったこと。私知ってるもん』
「それはそれで困ったもんや」



止まない雨はないのだ。貴方が笑ってくれるなら、私は生きていける。キラキラしている水面を視界のすみに映し、時が流れるのを静かに心に刻んだ。



「気持ちも切り替えて、立ち直って、その時に西岡さんがまだ俺のこと好きでいてくれてるなら」



白石くんの表情は少し不安そうだったが、微笑んでみると彼の表情も満面の笑みに変わった。
好きに決まってるじゃない。でも、彼の言葉の続きが気になるから、言うのをやめた。私のことを気にかけてくれているのが伝わってくる。こんな幸せな気分、なかなか味わえない。自然と笑みが溢れてしまう。



「西岡さん。何、笑って…」
『ごめん、なんだか嬉しくて』



まだ白石くんのこと好きでいていいんだ。それが何より嬉しい。一時は終わることも覚悟したのに。



『待ってるよ。けど、私がもし別の人を好きになってしまったら』
「…その時は」



ああ。大好きな白石くんの表情だ。優しく微笑んで、しっかりと目を見つめてくれる。
私はこうして一歩、また一歩と白石くんとの距離を縮めていこう。私らしく、焦らず、ゆっくり。素敵な関係になれるまで、思ったり時間は掛からないのかもしれない。でも、今くらい少し意地悪言って、甘えてみてもいいよね。



「その時は勝手に、俺が必死になるから」



私はこの気持ちを大事にしながら待っていよう。恋をしなきゃ味わえない、かけがえのないこの気持ち。







After Blue


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