4限目を爆睡してしもて、目が覚めた時には昼休みに入ってた。けたたましいクラスメイトたちの声に苛立ちを覚えながらも重い瞼を上げる。くあっと欠伸をすると涙がでた。爆睡からの目覚めにおる場所ではないな。そう思た俺は弁当箱と水筒を持って教室を後にする。

ガンガンする頭を冷やしたくてひとり屋上に出た。ひんやりした風が体中を冷やしてく。自然と眠気が覚めてった。今ハッキリうつる視界に飛び込んできたもの。



「南…先輩」



先輩が俺の方を向く。目が合うといつものように心臓が跳ね上がる。いい加減慣れろよな。俺の心臓。



『財前くん。おつかれー』
「うぃっす。お邪魔しまっす」
『どうぞどうぞ。一緒に食べようっ』


隣に腰掛けると思たより南先輩との距離が近くて焦った。触れそうで触れへん肩がもどかしくて、ちょっとだけ間あけて座りなおす。先輩の弁当の中身は相変わらず可愛らしかった。休日の部活中に見掛けた弁当と変わってなかった。


「相変わらず自分でつくってるんすか」
『うん』
「受験中も?」
『もう日課になってるからね。つくるのが当たり前なんだよ』



今、南先輩と一緒に風に吹かれて一緒に髪がなびいてる。心地好くていつの間にか箸もスローペース。それでも遅めの先輩にはすぐに追い付いた。ちまちま食ってるあたりがまた愛らしい。



「ご馳走さま。にしても南先輩遅いっすわ」
『そんなことないよ!ほら、食べ終わった。ご馳走さまでした』
「遅いですって。リスみたいやわ」



『財前くんってさ…』
「ん?」
『優しいよね』





微笑む先輩を直視すると顔が熱くなってくんのがわかった。とっさに顔をそらすともっと熱くなった。思考回路が動かへん。なんで先輩が微笑んだだけでこんなんになんねん。ほんま意味わからん。



「俺が…優しい?」
『うん』
「正気っすか」
『棘があるようで。実際は棘なんてないよね。思いやりが伝わってくるもん』



見透かされてるみたいや。俺の気持ちも。南先輩への恋心も。鈍感なようでそうとは違うんやろか。でもこんな形で告んのは嫌や。恥ずかしいだけやん。どないしたらええんや。どないしたら。





「優しないわ!」





財前くんったら照れちゃって。クスッと笑った南先輩を背に、弁当箱と水筒を抱えて走る。いじめたったらおもろくて、可愛さまで溢れる南先輩。そんな人になんで俺がからかわれなあかんねん。ほんまは見透かされてる見透かされてないなんてどうでもよかった。俺が南先輩を好きなんは紛れも無い事実。
俺が先輩を好きな以上、先輩には敵わへんのかも。熱くなった体中を冷やしたくて廊下をただひたすら駆けた。