季節の変わり目の雨って憂鬱になる。朝から降り続いた雨が放課後、部活の中止が決まった直後にあがった。ラッキーなんかアンラッキーなんか。よくわからんかったけどこのまま家に帰ってじっとしとくんは嫌やった。


暇を持て余して街に繰り出した。駅前は思たより学生で賑わってる。こんな時間に訳もなく街におることなんか今までなかったからなんか新鮮。同時に妙な孤独を感じる。



とりあえずぶらぶらしてみよか。そう思た矢先、目の前が真っ暗になる。驚きのあまり一瞬、周りの騒がしい音が聞こえんくなったけどすぐ状況を把握できた。



『だーれだっ?』



背後からあほみたいな南先輩の声がした。これやからこの人は。とんだけ俺の心に入ってきたら気が済むんやろか。
まずは軽く膝を曲げて南先輩の両手から逃れる。素早く振り返り、南先輩の『えっ?』という声と同時に南先輩の頭にチョップをうつ。ゴッと鈍い音。南先輩の視界が揺らぐ。



「100年早い!」
『うぅー。財前くんひどいよ…』
「ひどいんはどっちなんスか。かわいい後輩を驚かそうとして」
『全然かわいくなんかないよ…。そんなに私のこと嫌いなの…?』



冗談やろうけど今のは反則や。かわいすぎる。とっさのことやからどんな反応したらええんかわからへん。どないしよ。心臓がやかましい。


「嫌い…やないっスわ」
『…知ってるよ』



仕返し。と子どもみたいにはにかんだ南先輩。やっぱりこの笑顔、めっちゃ安心する。
この笑顔をいつも側で見てられるなら。何度思ったことか。何度願ったことか。


「先輩は買い物っすか」
『うん。単語帳をね』



俺もついてくっすわ。そう簡単に言えたならどんなに気持ちいいやろか。恥ずかしさと葛藤するも、そんな言葉俺に言えるはずもなく。今夜も後悔することになる。



「そっすか。ほな、俺はこれで」



俺のアホ。好きな人の前でくらいキャラなんか壊してまうくらいの気持ちでないとあかんことくらいわかってんのに。
南先輩がバイバイ!って言って笑った。先輩の笑顔が胸に突き刺さる。ほんま。南先輩に関わると後悔ばっかりや。
でも、俺が南先輩が好きなんは紛れも無い事実で。そう簡単に諦められるヤワな気持ちやないってことも。俺は気付いてる。