『待ってるね』


今日は遅くなるんでしょう?俺が家を出る前に名前が言ってくれた言葉。かつては浪速のスピードスターと呼ばれた俺も仕事にはかなわへん。名前とは同棲してて結婚の約束もした。愛しくて仕方ない名前に早く会いたい。そんな思いで残業に取り掛かるもあっけなく時間は過ぎてった。やっと終わって帰る支度したらもう22時前。最悪や。



会社から駅まで徒歩15分。走ったら数分。気持ちは名前に早く会いたい会いたい言うてるものの体は疲れた疲れた言うとる。今日は走られへん。諦めてとぼとぼ歩きながら携帯を開いた。名前にメール送ろ。

…と思たけどやっぱ電話にしよ。声が聴きたい。



『もしもし?謙也お疲れさま』

通話ボタンを押してから数回のコールで名前の優しい声が聴こえてきた。やっぱ癒されるわ。大好きな名前の声。あぁ、体が軽くなる。


「遅なってごめん。今から帰るわな」
『ううん。気をつけてね』
「名前は今なにしとったん?」
『謙也のこと考えてたよ。そしたら電話鳴ってびっくりしちゃった』



名前の笑う声が聴こえる。早く名前の笑顔が見たい。早く会いたい。やっぱ走ろう。そう思た瞬間。

『謙也。ゆっくり帰ってきてね』
「え」
『急いで帰って事故でもあったら大変でしょ。私は謙也の体が心配だよ』
「でも俺は」
『浪速のスピードスターなら帰ってきてからすればいいよ。ダッシュでご飯食べたりダッシュでお風呂入ってさ』


そんなんスピードスター言わへんやん。突っ込むと名前はアハハって笑った。言われた通り走るんはやめて速めに歩いてみる。キラキラと輝く町のネオンが背中を押してくれる。



「名前」
『ん?』
「もちょっと待っててな」


うん!名前の元気な返事を聞いて、また暫しの別れを告げた。通話を切るとなんか妙に鼓動が高鳴った。
名前が待つ家に早く帰ろう。ダッシュでご飯食べてダッシュで風呂入って、名前とイチャイチャしよ。俺な、名前が好きで好きで仕方ないねん。帰ったら一番に伝えよう。


待ってるね


(大好きな君が待つ家まであとちょっと)

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