「何しとん。はよ帰んで」



急かしてくる光を無視しながら歩道と車道の間に真っ直ぐ描かれた白線の上を慎重に歩く。気分は綱渡り。でも車の交通量はほとんどないから安心。夕焼けに包まれながら歩いてるから影を見ているだけでも面白い。ゆらゆら。


『おっとっと』

モタモタしてると光が立ち止まった。振り返る。ぴたり。
ゆらゆらと私の影がだんだん光の影に近付いてく。もう少し、もう少し。



「いつまでやってるん。ほら」



差し出された光の左手を軽快に通り過ぎた。なっ!と驚いた声を聞いてから振り返る。白線の上に右足を置き、それを軸に半回転。光はすかさず手を引っ込めた。恥ずかしくなったんだろうか。


『ごめんごめん』
「ほんま名前なに考えてんの」
『謝るから。笑ってくれる?』


あーほ。呟いて光が笑ってくれた。光の笑顔が私のエネルギーになる。元気になる。なんて言ったら光はまた笑ってくれた。


「1周年」
『?』
「去年の今日。付き合ってんで、俺と名前」
『おお!』
「忘れてたやろ」
『と言うより、もう1年なんだー。すごいね!』


ぴょんぴょん。白線の上を軽やかにスキップしてみた。意外とむずかしい。足元を見ながら歩いてると光の靴が目に入った。光が前に立ってるの気付かなかった。白線の上に立たれたんじゃ進めないじゃないか。前を向くと光と目が合った。



「ほら、いい加減手かせや」

サッと私の横に並んで右手を引っ張られた。おっと。白線から落ちた。ゲームオーバー。落ちてしまったんならもうどう歩こうが構わない。



「やっとやめたん」
『落ちちゃったから』
「それは残念やな」



これからの1年も仲良くしてね。と囁くと光は1年限定ちゃう。ずっと仲良うするわ。と呟いた。


ゆらゆら。
ふたつの影が揺れる夕焼けの帰り道。私は今日も光が好きでした。


ゆうやけこやけ


(なんでこんな謎な奴に惚れたんやろ、俺)(どしたのー?)
(なんもない。…好きやで)


羽澄さま。雨恋い1周年おめでとうございます!
勢いで書いてしまったらこんな酷い出来になりました。すみません。これからも通わせてくださいね。

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