「苗字ちゃうん」
『え?』

聞き覚えのある声が後ろからした。振り返るとクラスメイトの財前がいた。
財前とは結構仲が良いほうだと思う。というかお互い意識はしてるはず。私も財前も異性の友達は少ない。財前に至っては他のクラスとなるとわからないんだけど。私はまともに話す男が財前しかいない。財前も私以外の女の子と話してるところをあまり見たことがないから。


『あれ、今日部活休みなの?』
「うん。昼まで寝てた」
『休みだからって寝過ぎでしょ』


よく考えると私服の財前って初めて見た。かっこいいな。今時の男のコって感じ。私の視線に気が付いたのか、財前は私から目をそらした。照れたのかな。

まさか休日に財前に会えるなんて。明日学校に行ったら当たり前のように会えるんだけどやっぱり嬉しい。


財前はCDショップに行ってたみたいだ。欲しかった洋楽が買えたと喜んでた。私はというとお母さんからスーパーに牛乳買ってきてと頼まれたので渋々出てきたとか。お互いの今日の過ごしかたを話しながら並んで歩いた。


『時々一緒に帰ったりするのに…なんだか照れるね』
「なんでやねん。意味わからん」
『私も財前も私服だからさ。な、なんか』
「デートみたい。って?」

図星をつかれて一気に顔が熱くなる。それをごまかすこともままならなくて、そんなこと言うんじゃなかったと後悔が私を襲った。



「真っ赤やで。苗字の顔」



そう言って私の一歩前を少し早足で歩く財前の顔も、少し赤くなってた気がした。それがなんだか嬉しくて、置いてかれないように私も早足で財前の背中を追った。


『こんな可愛いレディを置いてくなんて酷いよ』
「自分でゆうな」
『だって財前言ってくれないもん』
「なんで思ってもないことゆわなあかんねん」


財前が急に立ち止まったから驚いて私も立ち止まった。振り返り突然差し出された左手。右手を差し出そうとした時財前が口を開いたから手を引っ込めた。



「寒いやろ。握ったら」



信じらんない。どれだけ素直じゃないんだろう。手繋ご。くらい言えないのか。



『あんまり寒くないけどね。握ってやりますか』



右手で財前の左手を掴んだ。急接近に心臓がバクバクいってる。それはきっと財前も一緒なんだろう。そう思うとなんだか可笑しくて、繋いだ手にギュッと力込めた。


素直じゃないね


(私、真冬の雪が溶けるほど財前と恋したい)(勘弁してくれ。俺ん中の雪はとっくに溶けたわ)
(もうアツアツってことか!)(…。)

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