降り出した雨の音で目が覚めた。頭上にある白い窓を手で擦る。瞬く間に雫が滴り落ちていく。タイマーにしてあった暖房ももう切れていて、息を吐くと、息が白くなった。
隣には規則的な寝息を立てる蔵ノ介くんがいる。ふたりの体温で暖かくなっている布団に再びうずくまると、なんだかとても幸せな気分になった。



「ん…」
『ごめん、起こしちゃった?』
「ううん…。寝られへんの…?」



目を擦りながら自然と頭を撫でてくれる。その間もウトウトしている蔵ノ介くんが本当に愛おしい。そんなことを思ってたら、いつの間にか背中に腕が回されていた。もう蔵ノ介くんの目もパッチリ開いてる。



「考え事?」
『まあ、そんなところ、かな』
「俺には言われへんこと?」



きっと蔵ノ介くんは気にしてくれてるんだろう。私が言いたくないかもしれないから、直球で聞いてくることもなく、だからといって気にならない訳じゃない。そんな蔵ノ介くんの心遣いが、温かくて、くすぐったい。眠れない夜に蔵ノ介くんがいるって、なんだか素敵。



『…こんな私でも、好きになってくれる人がいるんだな…って』



蔵ノ介くんと出逢ったとき。はじめてデートしたとき。はじめて手を繋いだとき。輝いた思い出が、順番に頭の中に甦ってくる。気がつくと、目には涙が浮かんでいた。潤んだ視界にうつる蔵ノ介くんは、とても優しく笑っていた。



「名前やから、好きになってん」
『でも、地味だよ』
「そんなことあらへん。名前は知らへんと思うけど、俺かてずっと名前のこと」



私は本当に良い人に巡り逢えたと思う。優しくて、温かくて。涙が零れると蔵ノ介くんは更に強く抱きしめてくれた。愛してる。そんな言葉だけじゃ足りなくなってきた。



「ほら、明日も一緒に出掛けるんやろ。もう寝よ」
『…うん』
「それに」
『ん?』



裸やから寒いしな。そう言って蔵ノ介くんは私を抱きしめてる腕の力を緩めた。布団を首まで被せられると酷く安心した。

窓辺に飾ってある、冬の花が咲いたら、愛おしいじゃ収まり切らない気持ちを蔵ノ介くんに伝えよう。とりあえず明日の朝は蔵ノ介くんと一緒に水をあげよう。それまでに私はたくさんの言葉の中から、蔵ノ介くんに伝える言葉を選んでく。そう胸の奥で誓う。不安を脱ぎ捨て、目を閉じると朝になる。雨の音を心地好く感じながら、ゆっくりと目を閉じた。


冬に咲く花


(少しずつ、前に進んでいこう)

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