左門


午後の授業が終わり1日の復習を終えた頃に一息つこうと食堂へ向かった。熱いお茶を淹れて癒されようと思う。ふつふつと沸いてゆく湯をぼんやりと眺めて待っていた。ぼんやりしているとは言え私とてくノ一のたまごである。こちらに向かってくる気配を感じて勝手口に意識を向けていた。ぱ、と顔を覗かせたのは忍たまの3年生だった。隈が酷くぎょろりとこちらを睨んだ彼が少し恐ろしかった。何も言わず、じりじりとこちらへ近付いてくる。後ずさるスペースなど無いに等しくすぐにその距離は縮まった。

「え、な、なに」
「ぐるるる……」
「はぁっ?!」

初めて聞いた彼の声は、唸り声だった。獣のような。ギラギラとした瞳が向けられ、肩を力強く掴まれる。その勢いと早さは避ける隙も与えない。一体何なんだと落ち着いて思考を動かす間もなく、彼はぱっくりと口を開ける。大きな歯が綺麗に並んでいた。がぶり。

「ちょっ…い゛ッッ……!!!」

その歯は私の首筋に突き立てられ、噛まれた。訳のわからない内に後輩の男に噛み付かれ、いやぁんなんて可愛い声なんて出ない。というか、途轍もない力で遠慮なしに噛むものだから、痛い。単純にとても痛い。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

悲鳴のような断末魔のような声をあげて暴れると彼の口が私の口から離された。その口元には鮮血がついていて、じくじくと痛む首筋に起こっている事を想像して肝が冷えた。

「どうし…っ…左門!!」

力が抜けて地面にへたり込むと同時に同学年の田村が姿を現した。左門と呼んだ3年の忍たまに振りかぶって頭をゴチリと殴ると、殴られた男の子は簡単にその場に倒れてしまう。

「すまない、こいつがお前に何かし…?!」

私の姿を見て察した田村は気絶している3年生の頭をもう一度殴った。よくよく見ると田村も酷い隈が出来ている。

「なんでくのたまの首噛んでんだ馬鹿っ!!」
「あ、えっと、その子、何?病気…?それか何かに取り憑かれてるの?」
「限界だったんだよ…こいつ5徹目で夢と現実の境がわからなくなっているらしい。獣になる夢でも見てたんじゃないか。こいつを委員会の元へ送ったら医務室付き添うから、少しここで待っていてくれ」
「い、委員会の後輩だったんだね…」
「本当にすまない。私たちの管理不足だ。潮江文次郎会計委員長にも後で報告しておくよ。」

田村は3年生を抱えて食堂を去った。



首筋に噛み付いた/左門
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