七松


(ややグロ/殺される)



武闘派のくのたまとして名を馳せていたミョウジナマエという女が同学年にいた。確かに腕が立つし、力はないが持ち前の反射神経と俊敏さ、武器の相性の良さから5年の忍たまともタイマンを張れるほどの実力の持ち主だった。そんな彼女の事を私は気に入っていたし、よくちょっかいを出して戦っていた。彼女は素早い。しかし私よりかは遅い。彼女は強い。しかし私よりかは弱い。いつも力加減をして遊んでいたのだが先程まで理吉さんと手合わせをしていたものだから力量を誤ってしまい、うっかりミョウジの首の骨をぽきりと折ってしまったのだ。しまったと思った時にはもう手遅れで、ミョウジが見事に着地を決める事は2度となく無残にも頭から地面に落ちてしまう。その衝撃に耐えられなかった頭蓋骨は割れ、どくどくと血を流す。声を掛けても返事はないし手首を握るがそこに拍動はなく心臓が動くのをやめてしまったことを悟る。あーあ。結構お気に入りだったのに。こんな些細な事で事切れてしまって残念だ。私は息絶えたミョウジを抱えて裏裏裏山へ走り先月掘ったまま残っていた塹壕にミョウジを寝かせてやった。開いていた瞼を閉じてやり胸の前に手を重ねるとそれはまるで死人のようだった。あ、違った、こいつはもう列記とした死人だったか。

ミョウジを寝かせてから数日その場へ通った。死んだ人間は生き返らないという事はわかっているが、またミョウジと戦いたいという希望を抱いて側に立つ。しかしミョウジは動かない。それどころか日に日に体は腐敗して朽ちてゆく。虫に喰われ、カラスに喰われ、犬にも喰われ、もうほとんど人の形をしなくなった頃にようやくミョウジが死んだ実感が湧き、塹壕を埋め始めた。黙々と土を掛けてゆく。どんどん骨と肉塊が見えなくなり、鼻を刺すような腐敗臭が和らいでいく。最後に周りと馴染むような色の土を被せて程よく木の葉も散らしてやれば、誰もここにミョウジだったものが埋まっているとは思わない、まるで何も無かったかのような場所になる。上出来だ!と声を上げ、学園へ帰るべく来た道…ではなく、少し冒険的な獣道を走って戻った。





「小平太、最近くのたまのミョウジ見てないよなぁ」
「あぁ、見てないぞ、留三郎!」
「2週間近く長屋にも帰ってないし授業にも出てないらしくてな。先生方が行方を捜しているらしい」
「そうなのか〜」
「……心配じゃないのか?」
「アイツの事だ、ひょっこり帰って来て私と戦ってくれるさ!」
「それもそうだな…その時は俺も戦わせ貰うからな!」
「留三郎はだめだ、私とミョウジの一騎打ちが先だ!」

行方不明となったミョウジナマエを心配する同輩の声が学園で囁かれる。しかしアテもなく手掛かりもなく、捜索が難攻不落の事件として落ち着き始めた頃、まことしやかに神隠しの噂が流れ始めた。


「なら私はカミサマになったんだな」

茶目っ気のある声でそう言い放つ少年が学園を卒業するひと月前。

半年前に消えた少女の行方は誰も知らないまま、奇怪な神隠しであったとして一連の事件の幕が引くのであった。


20140320


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