兵大夫


僕と三治郎とナマエとその友達とで出掛けようと言う話に至った経緯は覚えていないが、兎に角今日は4人で外出をする事になっている。待ち合わせは忍術学園の門。三治郎は委員会で少し遅れると言っていたので先に門へ向かうと僕が一番乗りだった。出門表に名前を書いて外で待っていると、次にナマエが顔を覗かせた。

「夢前くんは?」
「委員会でちょっと遅れるって。そっちは?」
「身支度に時間がかかるんだって。待ちきれなくて先に来ちゃった」
「そっか」
「ちょっと待つかもね」
「だな」
「さむいね」
「あぁ」

隣に並んでぽつぽつと話しながら体を小刻みに動かして手を擦り合わせるナマエは確かにどこからどう見ても寒そうだ。僕だって寒い。けど耐えられない程でもない。

「もっと着込めば良かったのに」
「ね。もうあったかくなるかなーって油断しちゃった」
「そっか」
「ねぇ、つめたいの」
「何が」
「手」

そう言って向かいに立たれ、ずいと僕の前に手が差し出される。未だにぶるぶると震えながら、ナマエは僕を見上げる。赤くなった手は冷たそうだった。けれども僕はその手を取る気にはなれない。こういうあざとい仕草をする女子は嫌いだから。何もアクションを起こさずに冷ややかな目でナマエを見下ろしていると、いつまでたっても何もしない僕に痺れを切らせたのか、更に手を近付けてくる。

「さわってよ」
「やだよ」
「本当につめたいんだよ、ほら」
「見ればわかるよ」

ぶっきらぼうに答えると、ナマエはむくれた顔をする。眉間に少しシワを寄せて小さくて形のいい唇をつんと尖らせる。出た出た、そういうの勘弁してくれよ。

「もういいよっ」

拗ねた様子で隣に並び直し再び自身で擦り合わせ始めた手を、僕は引き寄せた。バランスを崩した体がよたりと傾くがしっかりと踏みとどまる。ナマエの視線が突き刺さるのを無視して赤い手を包み込んだ。

「確かにつめたい」
「でしょう?」

満足げにふわりと笑うナマエをちらりと見やり、本当にあざとい事ばっかする女子だと溜息をつく。僕はこういう女子が嫌いだ。きらいだ。


20140317



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