そう容易くはないさ※



「ねえー見てよシズちゃん!これいいでしょ!?」

「あ?」

更衣室から屋上のプールサイドへと向かう途中、同じクラスの臨也が楽しそうにはしゃぎながら俺に水着を見せ付けてきた。
一見して何の変哲も無い学校指定のスクール水着ではあるのだが、横に鮮やかな赤いラインが縫い付けられている。

「ほらぁ、よく見てよここ!」

言われてよーく顔を近づけてみれば、ライン上にはLOVEという文字が一直線に並んでいた。
LOVELOVELOVELOVE…これはキモい。

「カッコイイでしょ!?実はさ、昨日徹夜で縫い付けてたんだよねえ!」

「…お前、馬鹿か」

「えへっ、分かるー?俺って超イケてるよねぇ!」

一人うんうんと頷く様はかなり痛々しかったのだが、俺はその際不覚にもドキリとしてしまった。
奴が自慢げに水着の左右を引っ張った瞬間、股間の形がくっきりと浮かび上がったのだ。

「ん?どうしたのーシズちゃん?」

慌てて何でもないと手を振ると、臨也は胡散臭そうに目を細める。

「あは、もしかして俺のセクスィーボディに惚れた?」

「はあ!?何言ってやがる死ね!」

咄嗟にそう言い返しつつも、意外にぷっくりした乳首の形から目を離せなくなる。
――ちょ、なんだよコレ!臨也のくせにこんな綺麗なピンク色してやがるなんて反則だろ…!?
あー、触りてえ!
触りてえ!
触りてえ!
しかし臨也は俺の内面の葛藤になど気付く由もなく、他の奴等のところへ自分の水着を見せびらかしに行ってしまった。






「シーズちゃん?」

呼びかけられてハッと我に返ると、案の定臨也が不思議そうな顔でこちらを見ていた。友人の中でもシズちゃんなどという嘗めた呼び方をしてくるのはこいつくらいのものだ。

「ホントにどしたの?さっきからやけにぼーっとしてさあ」

「え…」

慌てて回りを見回せば、いつの間にかプールの授業が始まり、既に水慣らしの自由時間に入っていた。
深い中央付近で同級生達がやかましく戯れる中、臨也は水を掻き分けながら、プールサイドの段差に腰掛けて時間を潰していた俺のところまでやってきた。水面から顔を上げればぐっしょりと濡れた黒髪が額や首筋に貼り付き、水の滴る白い肌は男とは思えぬ程の艶を放っている。
しかし、そこに明らかな“違和感”が一つ。

「…お前、何で前抑えてんだ」

「あは、新羅たちにちょっかいかけたら猛攻撃受けちゃったんだよねー。俺ってばお茶目さん☆」

「一体何しやがったんだよてめえ…」

びっこを引くようにぎこちない歩き方をする臨也を横目に見ながら、俺はふうとため息をつく。
俺はともかく新羅や門田は普通に接していれば基本的に温厚な奴等だから、彼らが凶暴化したのだとしたらこいつの方に原因があったとしか思えない。




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