いっそ清々しいね※



結局それ以降、特に変わったことは起こらぬま夜中になってしまった。
手の甲にボールペンを突き刺されて以来、俺的に帝人先輩は結構なサディストだと思っていたのに、これじゃ完全に拍子抜けだ。すぴーすぴーとベッドの上からしている寝息だけ聞けば純情な少年そのもの。あー何か無性にムラムラする。先輩の息遣いだけでにわかに盛ってしまった俺は、布団の下の手をそろりとパンツの中に伸ばし――舌打ちした。
ガムテープは未だしっかりと皮膚に張り付いていてなかなか取れそうにない。
それでも意を決して角っこを捲ると、粘着面に張り付いた陰毛が引きちぎれてびりりと引き裂くような音がした。

「イタ――ッ」

目に涙が溜まりじわりと視界が潤む中、歯を食い縛ってさらに先端に向かって剥がしにかかる。
薄皮が引っ張られる刺激はその八割が痛みによるものだったが、そういった感覚に悦びを見出す俺の中心は幾ばくかの熱を持ち始めた。声を必死におし殺しながらも、快楽に正直な腰はびくりと跳ねる。
――ああ、気持ちいい。
帝人先輩がここを噛んでくれたとしたら、こんな感触なんじゃなかろうか。夢中で性器を刺激しながらふとそんなことすら考え始める。

「…青葉、くん?」

だからベッドの上から呼ばれたときも、すぐにはその声に気付けなかった。

「――え?」

腰の上にずっしりと重みを感じて初めて視線を上に向ければ、カーテンの隙間から差し込む街灯の光を浴びて青白く浮き上がる先輩の顔はどこか苛立って見えた。

「僕さっき、それ剥がしちゃ駄目って言ったよね?」

「や、だって…――あアアんッ!」

いきなり残りのテープを乱暴に引き剥がされ、あまりの痛みに背中が海老沿った。

「ふふ。ああ、ヤラシイなキミ」

早くも先走りで濡れ始めた俺の性器を冷たい目で一瞥してから、先輩はその鈴口にギリ…と爪を立てる。

「ひ…あ…痛――アッ」

どぷりと零れた液が帝人先輩の指先を濡らした。その事実だけで、俺の興奮は大きく増幅されイキそうになるが――量を増したカウパーに微かに顔をしかめながら、先輩は円らな瞳を蔑むように細くする。

「ねえ…キミ、痛いの好きなんだってね?」

「ひっ、あぁぁあああッ!」

問答無用に押し入って来た強烈な痛みに薄目を開けば、驚くことに俺の持参したアナルバイブが後孔に差し込まれていた。だらりと垂れた黒っぽい液体が太腿を伝い落ち、鈍る思考の中ソコが切れたことを理解する。
――帝人先輩が、これを?
俺はただ驚きに目を見開き、完全に胎内へと埋まったバイブのグリップを見つめる。

「あは、あははははは」

笑っているのは俺ではない、帝人先輩だ。
彼は俺の上でケタケタと楽しそうに肩を震わせながらスイッチを入れ、にわかに抽挿を開始した。
ヴイーンと唸りながら回転しだす先端は容赦ない強度で内部を引っ掻き回し、股間をどんどんヒートアップさせていく。

「あ――うッ!せん、ぱ…」

それでも自然と腰を振ってしまう快楽主義者の俺に注がれるのは、この上ない蔑みの色。

「こんなのでビショビショにして…青葉くんって本当にいけない子だね」

「やんっ、あ、きもちい…れすっ!せんっぱ、い」

「そう?じゃあこれでも…?」

唐突に熟れた鈴口に細い棒があてがわれたかと思えば、そのままずるりと中へ押し込まれた。
大きすぎる質量にうっと息が詰まる。

「イ……やぁ!痛っ、いだいよぉ…!」

突き刺すような痛みにカッと目を剥いて、俺はただ掠れた呻きを漏らす。
塞がったモノ。しかし後ろでは絶えず前立腺を刺激し続けるバイブレーション。絶頂に近づいているにも関わらず、欲望のはけ口を失った身体は内側からビクビクと不規則に痙攣し、頭さえおかしくなりそうで。

「うぐ…。やだせんぱっ、抜いてぇ…!」

「あはは、何言ってるの?それくらい痛い方が好きなんでしょう?」

帝人先輩は一旦呆れたように肩をすくめてから、俺の鞄をゴソゴソと漁ってボンテージを取り出したのだった。






20100729
マゾバでSM!自分で書くとどうしても温くなってしまう…!


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