衝撃スクープ



最近帝人の様子がどこか変だとは思っていたんだ。
だけど“このときまでは”あくまでもあいつは普通の奴なんだと思っていた。放課後に何故か一人さっさと帰っていくし、杏里と二人で遊び歩いちゃうぞーと脅しをかけても焦った色さえ見せない。てっきり帝人は杏里ちゃん一筋だとばかり思い込んでいた俺は、流石に奥手もここまでくればヤバイんじゃないかと心配し始めていたのだが、それでも奴は常識人だという考えははっきりと根底にあった。
――そう。それなのに。

「お待たせしてすみません、臨也さん…!」

「ああ、ああ、大丈夫。そんなに待ってないよ」

コソコソと帝人をつけてようやく噴水前に辿り着いた俺が目にしたのは、あの大嫌いな情報屋だった。
あんの野郎、仕事が忙しい忙しいと言っておいて、わざわざ池袋まで高校生を誑かしに出てくるとはとんだ暇人じゃないか。しかも二人の雰囲気からするに、こうして会うのは珍しいことではなさそうだ。
――もう最低最悪、極悪、ド変態。とりあえずは死んでくれ。
だけど、それにしたって帝人も帝人だ。
こんな明らかに怪しい男にほいほいついていくなんて、あまりに危機感がなさ過ぎるというものじゃあないか?

「今日は何しようか?何か食べたいものとかある?」

折原が嘘くさい笑みを浮かべて尋ねると、驚くことに帝人はぐいと奴の袖を引いた。あの可愛らしい杏里にさえも恐らくしたことがない過剰なスキンシップである。

「僕、臨也さんのマンションに行きたいです」

――うえええええ!?
ナイナイ、それはナイ!こんな悪魔みたいなやつの住処に行ったら取って食われるぞ!?

「え、俺ん家? 夕飯の用意してないけどいいの?」

「だって部屋なら臨也さんと二人っきりになれますしね。それに僕は、臨也さんだけでお腹一杯ですから」

にこりと笑って臨也の手を握る帝人は普段とはまるで別人だ。これは何というか――
恋に一直線な狩人の目。折原臨也のことをただの知り合いとして見ていない。

「うん?みみみ帝人ってもしかして…」

「これはホモですね…!」

「あっ、あああ杏里!?」

ギョッと目を剥いて足元を見ると、そこには何故か杏里ちゃんがしゃがみこんでいた。

「え――あー、いつからそこにいたんだ?」

尋ねれば、彼女はスカートの裾をぴっぴと払いながら立ち上がった。心なしか目がいつもより生き生きしているように見える。

「最初からです。だけど、それにしても意外ですよね。竜ヶ峰くんが折原さんとボーイズなラブを展開していただなんて」

「え、杏里ちゃん?どこでそんな汚らわしい言葉を覚えたんだ?」

「狩沢さんですけど…アーっ!」

「どどどどうした杏里!?」

「見てください紀田くん…!竜ヶ峰くんが折原さんを人気のない路地に連れ込みました!」

「え、それ帝人危ないじゃんいよいよ俺の出番だな!…ってアレ?アレレ?今何て…」

――誰が誰を連れ込んだって?何か順番間違ってなかったか?

「ほら、もっと近くに行きませんか紀田くん!竜ヶ峰くんが男を見せますよ!」

「えっ、ちょ」

俺は思いがけない杏里の怪力に促されるままに、帝人たちが入っていったほの暗い路地に引きづられていった。何が何だかさっぱりである。
しかし今回一つ分かったのは――俺の周りには変な奴しかいないということだ。





20100725
人前でイチャイチャな帝人様


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