SEXY PANIC:03



「いっやああああッ!!こんなんじゃもうどこへも行けないわ!!」

「何言ってるの。波江さんさっき、ホテルまで一人で来たじゃないか」

私の身体は落ち着いた様子でそう言った。
喋り方はおかしいけれど、その冷静沈着な態度はまるで普段の自分を見ているよう。悔しいことに、臨也の奴は私以上に私らしい波江を演じきっている。

「そうだけど…もう!どうしてそんなに落ち着いてられるのよ!」

臨也は少し驚いたように目を丸くした。

「え?だって別に、どっちもそんな異形の生物になったわけじゃないじゃない?そりゃあね波江さん、目覚めたらヒキガエルとかエイリアンとかサイモンになってたりしたら結構びっくりするのは分かるけどね?だけどほら、俺達二人とも人間だし、どっちもそれなりに美男美女だしね?」

「はあ?本当に美男になったんならそんなに動転したりしないわよ」

「え、それってどういう意味…」

「とにかく嫌なの!」

今朝はせっかくいい夢を見ていたのに途中で目が覚めてしまったばかりか、ち、ち、ああ言えないわッ。と、とにかく男性器が勃起しているわさらに気色の悪い液体は漏れ出ているわで、ちょっと好奇心を出して液体を舐めてみたらもの凄く不味いわでううっ、もう何もかも最悪なんだから!
最後の方は自分が悪いのだが、そこは気にしてはいけない。

「酷いなあ、波江さん」

「酷いって言えば臨也あなた!どうしてパンツ穿いてなかったの!?」

お陰でパンツ探しに手間取ったではないか。
怒り露にそのことを持ち出すと、彼は「ああ」と頷きながらしれっとした顔で言った。

「だって俺、ノーパン主義だから!」

「は…?」

さてさて。ここにきて一つ、知りたくも無い新事実が発覚してしまった。

「あれさあスースーして気持ちいいんだよね。さわやかで開放感があるっていうかさ、素晴らしい気分になれるんだ。うんそう、言わばこれぞノーパン、ラブ!病み付きになること請け合いだね!」

自信満々に両手を広げ、恍惚とした表情で語るのはあくまで私。
これじゃあまるで変態だ。

「えっと、じゃあ…それで今もノーパンなのね…?」

怒鳴りつけたい衝動をこらえつつ、尋ねる。

「ん?ああ、これは違うよ?波江さんの色気でどれくらい男が引っかかるか実験してみたかっただけさ」

「……最ッ低ね、あなた!」

「え、波江さん怒ってる?ってひゃあああやめてやめて!い゙、痛いってアイダダダダ!そんなことしたら波江さん死んじゃうかもよっよよよよよ」

「構わないわよ三途の川でも見てきたら?」

私は細い首を締め付ける腕に力を込めた。――ああ、そうだ。こいつを殺して私も死のう。
ごめんね誠二。貴方の大好きな姉さんはもうすぐ旅立たなければならないみたい。

「アイダダダっれじゃ、洒落に、なんないって、くはっ!…って、ん!?んあ!?な、波江さん、アレレ何だろう、ちょっと待って!」

何故か突然カッと目を見開いた臨也だったが、どうせ逃げ出すための作戦のつもりだろう。

「ふうん…そんなこと言ったってやめてあげないわよ?」

「ぐぎぎぎぎ…!いやっ、ホっント待ってっ!凄くっ、大事なっ、事だからさあっ!」

「…大事な事?」

私は動きを止め、疑いたっぷりに問い返した。

「そう、大事なことさ!」

「何?」

じっと見つめると、臨也はまるで別人のようにキョロキョロと視線を彷徨わせ――





「あのさあ、俺……トイレ…行きたくなっちゃった!」






20100618


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