イケないエスケープ事情



手が痛い。
ズキズキズキズキ。絶えず青葉の神経を刺激する痛みは、あの日のことを呼び覚ます。
冷たい目をした帝人先輩…
――ああ、イイ。
どうしようもなくいいんだ、あの目。蔑んだ視線。怒りのこもった声。先輩の全てが愛しくてたまらないよ。
やン、もっと、先輩のボールペンで青葉のことぐりゅぐりゅしてえ、青葉のここかき回してよお!やだやだそんな目で見ないで、恥ずかしいよ。ふああ…帝人先輩の指ったらエッチなんだからあ…!あ、ダメ、青葉もう我慢できな…

「そこで何してるのかなマゾバ」

――はっ!まさか…!
気持ちよくイッたばかりの青葉はギョッと目を見開き固まる。
快感のあまりつい失念していたけれど、ここは学校。自らが立てこもっていたトイレの個室がトントンとノックされる音で、彼は一気に現実に引き戻された。
しかもこの麗しい美声は…

「せ、せせせ先輩!?」

「そうだよお前がうわ言のように呼んでいた帝人先輩だよ。ってか何してるのかなマゾバは。そんなに犯されたいの」

「え、もしかして声に出てました?」

「ああもうバッチリとね。お陰で1年の生徒に僕がドSのゲイだって思われちゃったじゃないか」

どう責任取ってくれるのかな?と怒りに満ちたドア越しの声は問う。

「何言ってるんですか帝人先輩〜!だって全部ホントのことでしょ?」

「黙れ死ね殺すぞ淫乱マゾ野郎」

帝人は抑揚のない冷たい声で言った後、

「てかやっぱりアレなの?今そこでヤッちゃってるわけ?ぐりゅぐりゅって何使ってんの?」

「ああこれ、先輩から拝借したボールペンです!」

「え?もしかしてマゾバお前…僕のお気に入りのボールペンをケツマンコにブッ刺してヤラしく喘いでたわけ?」

「なっ!イヤン、そんな言い方…」

帝人先輩の言葉責めに反応したのか、萎えていた中心が再び硬度を取り戻し膨張を始めた。頬を上気させた青葉が自らくちゅくちゅと皮を上下させれば、先端から溢れた透明な蜜が脚を伝っていく。

「で?馬鹿で間抜けなお前ときたら、人様のボールペンで排泄物の通る穴をかき回してたわけだ。ああ気持ち悪い。そんなんで息子おっきくしてんだからねえ」

「ふはあっ、み、帝人先輩ったら酷すぎですう…!」

言葉とは裏腹に、じわりじわりと快感が熱を集め始める。さらには帝人がそこにいるのに直接さわってもらっていないというもどかしさが青葉を苛々させた。
彼は遂に耐えられなくなり、勢いよく腰を上げて個室のドアの鍵をカチャリと押し上げた。

「ねえ!焦らしてばかりいないで、先輩のもの俺にくださいよ!…って、え?」

予想外な事態に目が点になる。
扉が開くと目の前には、既にごっそりとボールペンを用意した先輩が待機していたのだ。

「うんマゾバ、次の授業はさぼりでいいよね」

――ああっ、先輩。俺は喜びのあまり今にも死にそうです。




20100611


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