君と同じ場所



※9巻ネタバレ



俺は人間が好きだ。愛してる。
だけど俺の愛はあくまで一般的なそれとは違う。そのことを俺は自分なりに理解していたし、別段誰かにこの特殊な思想を押し付けるつもりもなかった。
遠くから一方的に眺めるのが好き。相互的な感情はいらない。俺のこういう愛し方は、多分一個人に対しては多分とてもとても軽いものだった。
だって、仕方ないだろう?この地上に存在する人間全てを平等に愛しているのだもの。
だから俺は人間を愛しているが、彼らのために何かを犠牲にしたことがあるわけじゃない。一般人が言う恋愛とか友情とかそんな重苦しい感情に理性を奪われたことはない。一つのものに対して極端に夢中になったこともない。
いつだってこの胸の内にあるのは知的好奇心と、そのために進化しようとする可変的な意欲だけだった。
しかし一方で、友人の岸谷新羅はそんな俺とは間逆の価値観の元に生きていた。
愛されたい、認められたい、そんな特定の誰かのためならどこまでも盲目に、ときに非常にすらなれる。
彼の愛するセルティ=ストゥルルソンは人間ではない。
浮世離れした首無し女の虜となったことがはたして彼にとってのプラスになっているのか俺にはさっぱり分からなかったが、それでも新羅の瞳はいつも確かな自信に満ちていた。自分の進むべき道を知っている目だった。常に一寸先すら見えぬ真っ暗闇で面数さえランダムなサイコロを振りながら渡り歩いている俺の生き方とは完全に違っている。彼こそが俺にこの生き方を選ばせたにもかかわらず、そのことに気付いてさえいなかった。
そう、元々彼は人間になんててんで興味がないのだ。たとえ友人である俺のことだって実のところ何とも思っていないかもしれない。
彼が中学で友人を作ったのは首無し女の指摘を受けたからだし、俺を心配して逐一友人らしい忠告をするのも、俺を庇って怪我を負ったのも全ては“愛しのセルティ”に認められるためだったのだから。





「…大丈夫かい、臨也」

頭の後ろで新羅の声がしたので、俺は固く歯を食い縛ったまま無言で頷いた。
鍵をかけて締め切った生物準備室に暖房設備はなく、制服のズボンを膝までずり下げたむき出しの下肢には鳥肌が立っている。
新羅は床にうつ伏せて尻だけを高く突き出した俺の背後からその双丘を掴み、腰をゆっくりと引いた。
ずちゅ、と濡れた音を立てながらカリが粘膜を引っかいていく感覚に俺は全身を震わせる。

「う、ぁ……やめ、て…、抜かないでっ」

既に一度中出しした直後であったにもかかわらず、新羅は素直に俺の言うことを聞いてくれた。一旦抜ける直前まで引かれた腰が再度押し出され、中途半端な硬度をもった生ぬるい性器が内臓を割り開きながら奥まで侵入してくる。十分に慣らされて緩みきったアナルの内壁は最早快感しか生まず、俺はぎゅっと目をつぶった。

「ひ、…っふぁ、や…、イっちゃ…ッ!」

先端が奥の敏感なしこりをぎゅいぎゅいと圧迫されると、強烈な性感にともなって、完勃ちしていた俺のペニスからどっと白濁が溢れた。もう何度イったのかすら分からぬまま、俺は浅ましく腰を振る。床は吐き出された俺の欲液で一部分だけどろどろになっていたが、そんなことはどうでもよかった。

「臨也って本当に、こっち方面の才能あるよね…!」

新羅が息をきらせて楽しそうに言いながら、また腰を何度か打ちつける。尻の肉に挟み込まれた棹の太さは心なしか少し増したようで、太い熱の塊が内臓を揺さぶる感覚に脳髄をやられた俺の性器はまた頭をもたげ始めた。新羅はその厭らしい身体に興奮したらしく、腹に回した手で俺のを掴んで強めに何度か梳きあげた。

「あ、はぁ…!きもちぃ、よぉ、あっ、ンん…っ」

――喘ぎながら善がる俺とて、決して初めからこんなだったわけではない。
こうして他人の手でペニスを触られるのも、生えかけの陰毛や緩まったアナルを見られるのも最初はすごく屈辱的で嫌だった。
でもこうして新羅と二人きりでいる間、彼は俺だけを見ていてくれる。セルティセルティなんて言ったりしない。
そのことが何だか嬉しくて、俺はいつの間にか自分から新羅を誘うようになっていた。
彼が俺とセックスするのは練習と暇つぶしのためで、セルティとしないのは単に彼女を傷つけたくないという思い故。それでも俺は構わなかった。

「はぁ…、ねえ……出していーよ…」

神経が下半身にばかり集中している所為で、声が不本意にも舌足らずになってしまった。
顔を火照らせた俺がぎゅうぎゅうとアナルを締め付けると、中で新羅の精液が吐き出されたのが分かった。ああ、幸せ。俺は束の間の至福にうっとりと瞼を閉じながら新羅の手を取って優しく握り締めた。

(どうか今だけでも、君と同じ場所にいさせてください)




20110218


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