つつましやかな朝のご奉仕



久々にふわふわした夢を見た。
可愛らしくてほっそりした妖精のような――ああ、例えるならこういうのを夢魔とでも言うんだろうか。色香と可憐さを併せ持つ美少女が俺を誘惑するように艶やかに微笑みながら、頬に両手を添え桃色の舌を差し込んでくる。
夢だと分かってはいたが、不思議と悪い気はしなかった。
最近は雑務に忙殺されてこんな月並みの夢さえ見ることが減っていたから、あわよくばと素直に身を委ねてみる。するとまるで本当に身体が火照ったかのように熱を持ち、快感が身を包んだ。ああ、気持ちいい。どうして幻なのにこんなに気持ちいいんだろう。

「はぁ…んふぅっ……ッ」

あまりにもリアルな快感にあてられ思わず声を出したら、うっかり目が覚めてしまった。
そう――確かに目は覚めたはずなのだが。

「んっ、ンーッ!?!?」

間近にある誰かの顔。そいつの舌が今、実際に俺の中にある。差し込んで、口内をかき回し、舌裏を舐め上げていたそれは――

「ぶふ―――ッ!!」

「ありゃりゃ、イザ兄起きちゃった?」

ニヤリと笑う制服姿の舞流は、早朝にも関わらずしっかりガッチリと俺の上に跨っていた。そんな欲望丸出しの妹の態度に、正直俺は驚きを隠せない。

「ちょ!おま…ぶふぁっ、ぺェっ、何してくれてんだ?ああ゙?」

というか一体全体どこにキスで兄を起こそうとする妹がいる?普通じゃない、普通じゃない、絶対普通じゃない。こんな無駄なオプションは要らん。

「いやあ、イザ兄があんまり可愛らしい顔をして眠っていらっしゃるもんだから、ちょっとね」

「ちょっとねって何だ。キモいキモい死ね退け」

「やあ〜ん☆イザ兄のエッチ!」

問答無用で足を蹴飛ばすが、それでも全く悪びれる様子のない妹は何故かこの場を動こうとしない。

「何でそうなる。死にたいか?」

「いや?てゆーかさ、さっきからイザ兄のアレが当たってるんだけど」

俺は「え?」と聞き返しながらまじまじ妹の顔を見つめ、再度ゆっくりと目線を下に戻し――

「――ッ、んなっ!?!」

「あはっイザ兄照れてる?かっわいー」

舞流は俺が動くより早く毛布を捲り上げ、いつの間にか中途半端に勃起していたモノをぐいと握りこむ。下着には既にうっすらと先走りが滲んでいて、奴の手はその上からすりすりと器用になで上げていった。うわぁ、なんというテクニシャン。キモいぐらいに上手い。というかこんなワザ一体どこで覚えてきたんだ。そんなヤラシイ事ばっかする妹にはね、お兄さんもう怒っ、怒っちゃ、おこt、おこ――

「ちょ…マイ…ル、もぉ、やめろっ…!」

「え、何ー?もっとしてほしいって?」

目を細めて悪戯っぽく笑う妹の手は、するりと下着を引き摺り下ろす。そして先端の敏感なところを絶えず指の腹で刺激し始めた。透明な先走りが零れ落ち、手淫を施す華奢な指先を淫らに汚す。
――うう、駄目だ、喘ぐな。我慢しろ。
俺は毛布を握り締めて馬鹿みたいに歯を食い縛った。だって世間に恐れられる情報屋たる自分がこんな、低俗で意味不明な喘ぎ声なんか上げるわけには、

「うわっ駄目だ駄目、来る!来るってゆーか漏れるぅ!」

やばい、マジでもう出る。我慢できない。けど。でも!実妹の舞流が期待大の気持ち悪い目つきで性器をガン見してる前では、無理だ、見せられない。見せたくない。てゆーかむしろ見られたら死ぬんだから!

「ぬアァァアァーっ!!」

新宿最強、折原臨也の意地―――ッ!!

「ぎゃッ!うぅ…ちょっ、イザ兄!?」

突き飛ばされた舞流が鼻を押さえて声を上げるのを華麗に無視しながら、俺は猛然と自室のドアを飛び出す。そして――転倒した。




20100523


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -