天下統一



「シズちゃ、…ぁん!ッ、もう無理…!」

静雄が何本目かのボールペンを後孔に埋めると、臨也はたまりかねたように声を上げた。

「くっ…んなこと言ったって、そこにあるボールペン全部挿さないとお仕置きじゃねえか。俺は…もう無理だぞ」

苛立った声で応じる静雄の孔にも既に数本のペンが突き刺さっており、金髪の張り付いた頬を玉の汗が滑り落ちる。
二人の傍には彼ら自身のズボンや下着が乱雑に脱ぎ捨てられ、臨也と静雄は共に下半身丸出しのあられもない格好を晒していた。部屋にはしっかりとエアコンが効いているはずなのだが、二人とも何故か汗だくだ。
その原因は――床に散らばった無数のボールペンにある。

「っ、俺だってもう限界だよ…!」

「チッ、馬鹿言うんじゃねえ。だってお前まだ1、2、…6本しか挿れてねえぞ?」

静雄はどうにかスペースを開けて臨也に7本目を押し込もうと躍起になっていた。
――自分の尻が裂けるくらいなら、ノミ蟲のが裂ける方がマシだ。というかむしろそうなってくれた方がいい。元来卑怯なノミ蟲のことだから、どうせまだ限界なんか程遠いはずだ。

「俺、はぁ…シズちゃんと違ってガバガバじゃないんだから…、いィッ!」

もう少しで入りそうだというところで、臨也の肩がビクンと跳ねた。

「んっ!…あ、あう、あ」

「どうしたんですか臨也さん?」

そこへ涼しげな声がかけられ、二人は既に痛みに潤んだ目を声のした方へと向けた。
――竜ヶ峰帝人。
一見無害そうな童顔の少年は柔らなソファに腰掛け、冷たい飲み物の入ったグラスを傾けながら爽やかに微笑んでいた。

「あれ?…臨也さんの、すごいことになってますけど?」

「うっ、み、みかどくん…やっ、これは、違ッ、あ!」

いつの間にかしっかりと勃起していたソコを示されて、彼は色白の顔を朱に染めた。

「何が違うんですか?臨也さんは嘘つきですね。本当はドMなのに」

帝人は曇りのない笑顔のままさらりと口にすると、スリッパを履いた足をぽんぽんと下に叩きつけた。
そこに横たわっているのは床でも畳でもカーペットでもない。――ペットだ。

「うんそうそう、お前ならもっと素直なんだろうねえ…?」

黒沼青葉の腹を踏みつけながら少年は高らかに笑う。

「せんぱ、ぁん!俺もアレ、やりたいのにィ…!」

「うーん?それは駄目だよマゾバ。ドMなお前でやっても面白くないだろう…?」

ゲシゲシと力任せに踏みにじってやると、青葉はまるで犬のように舌を突き出してはしたなく喘いだ。触られてもいない股間はあろうことか完全に勃起している。
臨也と静雄はげんなりした目でそれを見つめた。
元はと言えば青葉が彼自身に使ってもらうためにと100均で大量のボールペンを購入してきたのが発端であり、自分達は単にその犠牲者に過ぎない。
普段なら嫌いな者同士互いに性器を擦らされたりする程度で済むのに、今日は奴のお陰で無駄にマニアックなプレイが追加されてしまった。

「あー、やっぱ夏場は冷やしたカルピスに限るねー」

帝人はグラスに浮かんだ氷をカタカタいわせ、そんなどうでもいいことを口にしてからふと部屋の隅に顔を向けた。

「ふう…なんか寒くなっちゃった。冷房の温度上げよーっと!」

何でもなさそうな顔のまま、ピッと軽快な音を立ててリモコンを操作する。

(げ、マジかよぉぉ!?)
(ありえないって!俺たち今でも超暑いんだけど!)

さらにげっそりと落ち込む二人を他所に、先程から踏まれ続けていた青葉はびくびくと身体を震わせて達した。
帝人は鬱陶しそうにその股間に踵を押し付けながら、恐らく本人は無自覚であろう歪んだ笑みを浮かべる。

「あーもうマゾバったらホント暑苦しい。こりゃお仕置き決定だね」

彼はそう言いながら立ち上がると、不気味な薄ら笑いを浮かべたままキッチンの方へ向かった。
――青葉の奴、終わったな…
違う頭で全く同じ事を考えていた臨也と静雄は、その直後に携帯の着メロを耳にしてピクリと眉を上げた。

「ドライアイスドライアイスっと…。あれ、電話だ」

冷凍庫を漁っていた帝人は急いでリビングを引き返し、机上から携帯をとる。

「…はいもしもし?――ああ、正臣?」

気のせいなんかじゃなく、声がワントーン上がった。

「何?今?アイス食べながらテレビ見てただけだよ、すっごい退屈…うん。え、これから?」
「ああ、うん。行く行く。すぐ出るからちょっと待っててね――じゃ」

帝人は通話を切り、楽しそうな笑顔のままでゆっくりと三人を振り返った。

「…ちゃんとできるよね?お留守番」

これすなわち恐怖の放置プレイ宣言を受けた臨也と静雄は互いにぎょっと顔を見合わせたが、青葉だけは恥らうように顔を赤らめた。





20100805


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