我慢は苦手分野



「ッ…唇……欲…」

「んー?…もー、クル姉ったらホントむっつりなんだからぁ。またなんかエロいこと考えてた?」

妹のマイルは邪険な目をしてからかうように言葉を紡ぎつつも、口元は嬉しそうに緩んでいる。彼女はクルリのパーカを掴んでぐいと抱き寄せ、自分と同じ桃色の薄い唇にそっと口付けた。

「ん…っ、違…」

クルリは反抗的に言葉を紡ごうとするが、マイルの巧みなテクニックにかかり声を封じられてしまう。
服の下から入り込んできた指がブラジャーのホックを器用に外し、緩んだ下着の隙間にするりと忍んで豊満な胸に触れた。クルリはゆるやかな刺激に眉をひそめるも、姉としてのプライドなのか声は上げない。
二人きりの静かな室内に、甘い息遣いと唾液が絡み合う淫靡な水音だけが響く。――かのように思われたのだが、

「わー、またやっているよこいつら!」

姉妹による甘い秘め事は、珍しく実家に足を踏み入れた兄の第一声によって遮られた。
ドアの方を向いていたクルリは目を丸くしてそれを見つめる。

「!…兄……帰」

「ただいまー…って言える雰囲気じゃないよねえ、これ。昼間っから盛り過ぎじゃないの?」

「ん?もしかしなくても羨ましいのかな臨也お兄様?」

マイルが若干気分を害されつつもどこか含みのある声で問いながら顔を上げるが、愛の邪魔者である臨也は既に台所に入って冷蔵庫を物色し始めていた。
作り置きのオカズがないか探しているのだろう。新宿で一人住まいを始めてから随分経つ今でもお袋の味が忘れられないらしく、時々こうやってひょっこり帰ってくるのだ。

「ばーか、んなわけあるか。っていうかさあ、いつも思うけどお前らよく姉妹でそんなことできるよね。そーいうの痛いと思うよ?俺は。俺なら自分と同じ顔した奴にキスなんてできないししたくもないね」

「ふーん?じゃあ顔の違うあたし達から愛の接吻をあげようか?」

「はぁ?はにひってんほ?――ンッ!」

女と言えど流石は体育会系、マイルの動きは素早かった。
タッパーから取り出した肉じゃがをもふもふと頬張りながら気を許していた臨也は、その瞬速に対応し損ね、背後からがっちり羽交い絞めにされる。

「え!?うわっ!何する気だよお前!」

「えっへへー!百合百合が駄目だってんなら、イザ兄を混ぜたら3PになってオールOKだと思うんだ!」

「だはっ!?ちょ、待ってそういう問題じゃないぞ!きんしん!近親相姦っ!――ていうかクルリも」

危ないのはマイルだけではなかった。
いつの間にやら前に回って太腿をがっちりガードしているもう一方の妹の存在に気付き、臨也はぎょっと目をかっ開く。
クルリは自身の豊満な胸を挑発的に兄の太腿に密着させながら、珍しくニコリと明るい笑顔を見せた。

「…共……遊…?」

――うわあ、この柔らかさはもしかしなくても…!
そこまで考えてから臨也は途端ものすごい罪悪感に襲われた。
――いや、別にコレ俺は悪くない。襲われそうになってんの俺だから悪くなんかないんだけど、でもなんか駄目っぽいじゃないか立場的に!

「…っ、ちょ!!待って俺無理!絶ッ対無理だからね!」

「あっらあ?けどイザ兄、息子さんの方は超元気そうだけどぉ?」

マイルが背中でケタケタと笑いながら、腹に回した手をズボンの中へと侵入させる。臨也はたまらず大声を上げた。

「っ…!!いやっ、だって!クルリなんか下着も付けてないし、それで挑発とか反則でしょっ…!」

何とか抗議しようとしたけれど自分でも何を言っているのか分からない。ああもう駄目だ。ていうかこんな状態じゃ何も考えられない。

「あはっ、イザ兄ったらそんなとこだけは目ざといんだねー。駄目だねーこのスケベ男はー」

「変…態……」

不名誉な言葉を浴びせられ、臨也は思わず泣きたくなった。

「いッ、酷いよ、変態はどっちなのさ!!って…んっ、はあぅぅ」

最後の理性がひねり出した切実な叫びは、二人の妹が始めた奉仕によってあっさりともみ消された。
――というより何より、恥だとか兄妹だとかそんなことは既に彼の中ではどうでもよくなりつつあった。

「っは、駄目、…きもちぃ…!」

――この兄あってこその妹達、とでもいおうか。






20100706
企画『愛してよ?』様へ提出


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