犯人を捜せ!



「ちょ、こいつは…」

「え、シズちゃん何かいたの?」

「しっ」

俺は指を立てて臨也を黙らせ、ベランダの上方に視線を戻す。

「う…ぐはっ」

部屋の中にはまだ波江さんがいるからだろう、ご丁寧にもわざわざ屋上からロープを伝って下りてきた二つの影。
一人を下敷きに踏み潰しながら立ち上がったもう一方の人物は、俺にも見覚えのある顔だった。

「ご苦労様、青葉くん。ってあれ、今日パンツ5枚もあるじゃない…!」

「ちびったんすかね。あの人ってばいい年してホントケツ筋が――ぐはあっ」

「青葉くんは黙っててね。一枚二枚三枚っと…」

可愛い顔をした少年は連れを蹴飛ばすなり、何食わぬ顔をして洗濯物を摘み取っていく。
いやいやいや取りすぎだろう。っていうか何に使うんだそれ。

「けど大丈夫なんすかね、さっき寿司屋で現行犯うんちゃらとか言ってたじゃないっすか」

「平気平気。誰も常識人の僕を疑ったりしないさ。――よし、保険に一枚だけ残して完了っと…」

「――待ってください!」

袋を抱えて退散しようとしたところへ、新たな影が舞い降りる。

「え!?――そ、そそ園原さん!?」

「あれ、いつの間に…?何かわかんないけど修羅場っすねー先輩」

「黙れマゾバが!」

「あン!」

「えっと…」

少女の困り果てた様子を見て、少年は慌ててかぶりを振った。

「あのね、そ、園原さん聞いて? これは違うんだ…」

「あ、そうなんですか、よかった!じゃあその水玉パンティは譲っていただけますよね竜ヶ峰くん!折原さんが今朝静雄さんとピーしてピーピー付けたやつ!」

「えっ?園原さん!?」

竜ヶ…崎?が友人の予想外の反応に困惑して固まったちょうどそのとき、ガラッと音を立ててベランダの窓が開いた。

「そろそろパンツ乾いた頃かしら…――あっ!」

「!!!」

部屋の黄色い明かりがベランダ全体に差し込み、目の眩んだ3人共がその場に硬直する。
矢霧波江はぎょっとした表情でそれらを見回した。…それも当然だろう、弟の友人達が他人んちでパンツを取り合っていたのだから。

「ちょ!何なの貴方達!?」

「いや、これは違うんですッ、これは――」

「っ、ドロボーッ!!私のパンツ返しなさい!!」

「私のパンツって…これどう見ても男物じゃないですか!」

「うるっさいわね!!あんたには色々と恨みがあるから覚悟しなさい、竜ヶ峰!」

「ギャー!!変なトコ触らないでえええ!」

「あ、杏里先輩ったら何コソコソパンツ取ってんすか!?」

「えと、何のことでしょう…?」

「なんだこりゃ…」

「ねえシズちゃん、一体外どうなってんの?」

つんつんとわき腹をつつかれて我に返り、狭い空間で首を回すと、いつになく不安そうな表情をしたノミ蟲と目が合う。
うっかり失念していたが、俺より奥に座っているこいつの位置からはベランダの様子が見えないのだった。

「うーん、別に見なくていいぞ」

「パンツは無事なの?」

「今のところはな。ってか臨也てめえ…なんか硬いもん当たってんだが」

「あは、ちょっと勃っちゃってさ。怖くて勃起するってホントなんだねえ」

悪びれも無くそう言う臨也の腰は、あろうことか既に怪しげな動きを始めていた。

「や、てめえ何擦り付けてんだよ!」

「んっは、らって我慢できないんだもん。シズちゃん、触って…」

「ちょ、」

――おいおいおい。
臨也のハシタナイ声を聞いた所為で、俺のまでなんか硬くなってきやがったじゃねえか。

「どうなっても知らねえぞ」

「あ、ぁん…シズちゃんの手ぇ、えっちい…!」

ドロリと濡れたモノをズボンから取り出して強く握ってやれば、ガクガクと脚の震えが伝わってくる。
――ああ、やっぱパンツよりナマに限るわ。






20100803


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