Go-Go-TRAIN!



「シズちゃん、シよ」

身体を寄せて耳元で囁いてあげたら、シズちゃんはびくりと身を震わせた。
俺と目が合うと少し戸惑ったように眉をひそめる。

「シよ、ってここがどこだか分かって言ってんのかクソノミ蟲…」

口から吐き出された声は、その言葉の刺々しさとは裏腹に震えていた。
真昼間で空いてはいるがここは仮にも電車の中、公共の場だ。他人に見られる可能性しかり、下手に声を出せば聞かれて通報される心配もあるだろう。
けど、けどさ!それを恥ずかしがってるシズちゃんって、なんて可愛いんだ!やっぱり俺のシズちゃんだなあ。シズちゃん、ラブ!これだからシズちゃんの恋人はやめられない。

「少しくらいなら大丈夫でしょ、ね?ほら」

ほとんど人もいないしね、となるべく可愛く(?)首を傾げながら、俺はおもむろにシズちゃんの前をくつろげる。
座席は6、7人掛けの向かい合うタイプのじゃなくて2人掛けのそれだったから、とりたてて見えやすい構造でもない。

「え、ちょ、いざや…」

「大丈夫大丈夫。あ、シズちゃんちょっと顔赤くなってる。可愛いなあ」

素早く席を交替してシズちゃんを窓際に押しやると、俺はその腰の上に顔を寄せ、下穿きからだらしなく垂れたイチモツを取り出し口に含む。
横はともかくとして斜め後ろくらいから見れば、今のこの状態はシズちゃんが俺を膝枕してるようにしか見えないはずだ。…ま、俺達がホモかもしれないという疑惑を思考から排除すれば、の話だけど。

「はぅ…ンふぅ…」

「くっ……」

シズちゃんは悩ましげに眉を寄せ、小さく腰を揺らす。既に性器はしっぽりと濡れそぼり立派に臨戦態勢に成り上がっていた。

「ほえはひははひこえはうよ(声出したら聞こえちゃうよ)」

「っるせー」

咥えたまましゃべったら、髪を掴んできつく引っ張られた。
あまりの怪力具合にひーひー言いながら、俺は頭を抑える。

「ふっはあ!いはいいはい!痛いじゃないの抜けちゃうってば!」

「ああいいさ、てめえなんか所詮禿げノミで十分……ってうおおっ!誰かこっち来るぞ!?」

「へ!?」

コツリ…コツリ。

「どなたか御用のお客様はいらっしゃいませんかー」

シズちゃんに言われて顔を座席から少しだけ出して後ろを覗くと、珍しく女性の乗務員が発券機を手に通路を歩いて来るのが見え、そして――間違いなく俺とばっちり目が合った。

「いってえ…!」

「乗車券を拝見させていただきますー」

――え。この乗務員、やけに歩くの早いんだけど。
俺がよいしょと体勢を立て直したときにはもう、既に真横でにっこり微笑んでいた。長い直毛の黒髪に眼鏡を掛けた清楚そうな女性。前にどこかで見たような気がするんだけど、気のせいかな。

「あ、はいコレ。えーっと、シズちゃんのは?」

シズちゃんはチャックで性器を挟んでしまったらしく涙目で悶絶しており、俺は彼の切符も代わりに出してやらなければと気付いた。

「えっと、ちょ…今出すから待っててねお姉さん」

俺は手を突いてシズちゃんの向こう、窓際の足元に置かれたバッグに手を伸ばし――

「ッ!!ふごーっ!」

手が滑ってうっかりシズちゃんの股間を押してしまった。

「どうかなさいましたかお客様?」

乗務員はシズちゃんの分の切符を受け取りながら訝しげに目を細め、明らかに股間をもっこりさせているシズちゃんに視線を落とす。

「ああいえ、何でもないんですよハハハ。ちょっとこの人前立腺に問題があってげぶぶっ」

――痛い。わき腹を責めるなんて酷いよシズちゃん!

「あら…そうなんですか。それはそれは…お大事になさってくださいね静雄さん」

彼女は一瞬目を見開いてから再び美しい笑顔に戻り、にこやかにそう言った。
その後おもむろに制服のポケットから何か取り出すと、拝見済みの切符と共に俺の手に押し付けてきた。

「これ、使ってください」

「あ、えー、軟膏?あ、あはっアハハハハハどうもありがとう!ほら、シズちゃんもちゃんとお礼言いなよ」

「……う…あ…どうも……」







コツコツとヒールの音を響かせながら去っていく乗務員を笑顔で見送った後、俺はぼそりと呟いた。

「アイツ…何でシズちゃんの名前知ってるんだ」

「あ?」







「ゆまっちたっだいまーッ!」

隣の車両に着くなり乗務員…と思われていた女性は、それまでとは打って変わってはしゃいだ様子で一人の男の元へ駆け寄っていった。

「あ、狩沢さん無事だったんすか」

遊馬崎は完璧な車掌コスに身を包んだ相方がギタギタのギニャー(肉塊)にされていないことを確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
一方の狩沢は伊達眼鏡を外しながらキラキラと目を輝かせる。

「うんなんかね、全然ばれなかったよ!」

只ならぬ興奮の度合いから結果の予想はついていたが、念のため訊いてみる。

「それで?静雄さんと臨也さんがボーイズにラブってる現場は抑えたんですか?」

「それがね、超ラブってた!あれは本物だったよ!だってねえイザイザの口端にカウパー液ついてたもん!」

「あ、そ…そうですか」

よかったですね、としか言いようがない。




20100611


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