rape victim.1



相互記念。めいりさんリク
※監守と囚人




俺の勤める少年院にまた新しく少年が連れられてきた。
竜ヶ峰、帝人。十六歳という年齢のわりに幼い顔立ちをした彼が一体どういう経緯でここへ来ることになったのか、監守として数多くの少年達を見てきた俺にとっては当初さしたる興味もなかったのだが、何度か顔を合わせるうちに彼は他の少年たちとどこか違うのではないかと思うようになった。
帝人くんからはそもそも毒っ気というものが感じられない。見回り時や食事時など、彼と会話を交わす機会は稀にあったが、実際一対一で話をしてみても反抗期特有の生意気な物言いをするわけでもなく、至って冷静で人当たりがよかった。こちらに好感すら抱かせるほどに。
あの子はただ回りから勘違いされているだけで本当はいい子なのかもしれない。毎日定時に行われる見回りの際、いつの間にか俺の足は自然と帝人くんの部屋の方へ向くようになっていた。ごつくて可愛げのない、俺を「オッサン」呼ばわりしてくる無骨なクソガキたちの中にあって彼だけは一際輝いて見えた。できることならあの子ともっと話をしたい。接点を持ちたい。俺はいつしか彼の姿を見るだけで呼吸が苦しくなるほどに彼に執心していった。己の胸を食い破って溢れんばかりのこのトキメキ。大した収穫がないにもかかわらず健気にアイドルの追っかけに徹する女の子などは、ひょっとするとこのような心境なのだろうか。
最近の俺の頭の中は、専ら自分でもドン引きするくらいに帝人くんのことで埋め尽くされていた。彼は基本的に自分のことを語らない性格だったから、余計だ。一見してとても犯罪など犯しそうには見えないのに、傷ものの経歴をもつ少年。謎が謎を呼び、既に彼の人格は俺の妄想上で一人歩きを始めていた。
そうだ、出身は京都の名家がいい。気立てがよく優しかった母親は早くに他界し、旅館を経営する人のいい父は友人のために肩代わりした莫大な借金を抱え込んだ。あと、兄弟には妹が一人いたらいいな。歳の離れた妹が。補導されるきっかけとなった犯罪も全てその子を助けるためにやったっていう設定。なぜならばあの、いかにも人の良さそうな帝人くんが悪意など持っていようはずがないからである。あれもこれも何もかも良心の呵責に苦しみながらやむなく実行したことなのだ。

「……っ、」

午前二時。宿直室で一人だった俺は誰も見ていないのをいいことにこそこそと自慰に耽っていた。日々の不規則な仕事で疲れが溜まっていたが、流石は深夜のテンション。上の階の一室に閉じ込められている帝人くんの寝顔を想像しただけでいても立ってもいられなくなり、こうして息子を解放した次第である。
俺は吐精後の乱れた息をなるべく落ち着けようとしながら、卓上のティッシュボックスに手を伸ばして一気に二枚ほど引き抜いた。
壁の時計にチラリと目をやれば、そろそろ巡回の時間だ。
敏感になっている先端を手早くふき取り、丸めたティッシュ屑カゴに投げ入れてからズボンを上げて立ち上がった。
壁にぶら下げてあったライトを取り宿直室を出て階段を上る。深夜のほの暗い院内はひっそりと静まり返り、薄気味悪さすら感じさせた。ときおり誰かが咳をする気配や寝返りを打つ際に生じる衣擦れの音がくっきりと響く。消灯時間は過ぎているためライトスタンドをつけているものはおらず、数メートルおきに取りつけられた微弱な電灯だけが足元を照らし出している。
帝人くんも流石に眠っているだろうな。彼はいつもこちらが起こす前に目を覚まして顔を洗い終えている優等生で、就寝も早い。

「…ねえ、看守さん」


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