逮捕しちゃうぞ.2
「罪状は、そうだなあ…じゃあ手っ取り早く公然猥褻罪ということで」
「えっ」
さて、ところ変わってここはデパートのトイレの個室である。
帝人くんは俺のズボンのジッパーを下ろしながら楽しそうに言った。
「ちょっと、それどういうこと?俺、普通に道歩いてただけなんだけど」
「だって臨也さんの顔って、絶対誘惑してると思うんですよね。いっそ痴漢誘発罪とかあれば、そっちが適当なんですけど」
「……自分の顔をそんなふうに言われたのは初めてだよ」
俺は非難轟々の眼差しで帝人くんを見遣ったが、本人は特に気にした様子もなく俺のズボンを下着ごと膝までずり下ろした。いくらここが室内であるとは言え、外気が直接肌に触れてスースーする。
帝人くんは顔にかかる髪を鬱陶しそうに耳にかけながら上体を屈め、手首を固定されている俺の腰に手を回して便座に座らせると、うんこ座りよろしく膝を高く上げた状態で固定した。そうすると性器から孔から恥ずかしいところが丸出しになるため、恥ずかしくて落ち着かない。――しかも、
「ふぅん…何だかんだ言って、ここは正直なんですね」
俺の股間に屈みこんだ帝人くんの華奢な手が、既に半分立ち上がっていた俺の前に当てられた。ひんやりして気持ちがいい。まあ俺だっていくらネコであるとは言え一応は雄の端くれではあるので、可愛い女の子(本当は男の子)と二人きりで密室にいるとなれば普通に興奮するし、ここが家じゃないのを知っているから適度な背徳感もある。
実を言えばすぐにでも性器を扱いて欲しかったが、本日焦らしプレイに徹したい気分であるらしい帝人くんの手は最も敏感な性感帯を避けてゆっくりと恥丘へ滑り降りていき、平均的な日本男児より若干薄めな下生えを撫でた。ああ、もっと剛毛になりたい。
細い毛が擦れる感触のくすぐったさについ漏れ出しそうになる息を潜めていると、そのまま張り詰めた陰嚢をふにふにと弄ばれる。
「ふぁ……あ、」
「貴方はいつも、そういう厭らしい声で男性を誘っているんですか?」
帝人くんの意地悪な質問と突き刺さる視線が逆に俺の中の欲望を煽り、腹の奥がジンと熱を増す。
「…ち…っ違い、ま……はぁぁんっ…!」
「どうしたんですか?ちゃんと言えてませんよ?」
下生えの中を滑って後ろに回りこんだ手に孔の周りとぺたぺたと触られ、うっかり変な声を出してしまった。先走りで濡れた帝人くんの指はまだ入り口付近をマッサージしているだけだが、俺からすれば下半身はどこもかしこも性感帯なのだ。
指が立てられるのに合わせてふっと力を抜くと、日常的にセックス経験の豊富なアナルはあっさりと指を許容した。
「とても排泄器官とは思えませんね…しょっちゅう弄ってるんですか?」
「う…っ、それは、まあ…昨日も…」
自分の孔が普通の人よりグロテスクなのは知っている。そんなことより早くもっと奥に指を入れてほしくて、俺はいきむようにして強制的に孔を緩めた。
すると入り口付近でずるっと滑った帝人くんの指が2、3本まとめて一気に中に入ってきた。いや、もしかすると全部かもしれない。奥でもぞもぞと動く感覚が適度に内臓を刺激してすごく気持ちがいい。
久しぶりにフィストもいいなと張り切った俺がそのまますとんと腰を落とすと、ぎちぎちと皮膚を引っ張りながらも手が全て入っていった。
「あっ…あ、…も、らめぇ…!」
駄目というのはすなわちいいということだ。帝人くんは俺が勝手に手を飲み込んでしまったのが気に食わないのか無理矢理引っ張って抜こうとしたが、そんなにじゅぽじゅぽ中で動かされたら流石の俺も長くはもたない。
「イく……う、あ…!」
「――何なんですかもう、臨也さんのえっち!」
俺ががくがくと身体を震わせながらオーガズムに達した直後、帝人くんが恨めしげに呟く声が耳に入った。
あれ?そう言えば今日はまだ帝人くんのを貰っていない。俺の方は若かりし十代の頃と違って短時間に何度も連続で射精することは出来ないから、限られた絶頂を一緒に迎えないなんてもったいないのに。
「ねえ帝人くん、どうして…」
今日は一体どういう趣旨なのかと尋ねようとした俺に対し、帝人くんは珍しく歯軋りしながら悔しそうに告げた。
「臨也さんの、馬鹿。汗でストッキングが脱げないから待ってって言おうと思ったのに…!」
「――ああ、」
なるほど。張り付いたそれは流石に片手では脱げないだろう。
帝人くんの怒った顔が異様に可愛くて、煩わしいストッキングなんていっそのこと破いてしまおうと思ったけど、丁寧に脱がせるのも楽しそうだったので自重した。
「というわけでこの手錠を…」
「外したら強姦されそうなんでやめときます」
いやいやいや君のその行為も強姦だろ。と即行切り返そうとした俺であったが、目の前で帝人くんがストッキングと格闘する姿があまりにも可愛すぎて悶絶した。うわぁ、帝人くん萌えぇ。
20110225
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