迷惑千万:04
「正直言って僕、あなたみたく身勝手なキチガイ野郎は嫌いなんですよね」
心を突き刺す針のような言葉と共に俺の身体は乱暴に投げ出され、こっぴどく床に頭をぶつけた。
カタカタと鳴らされる軽快な物音に気付いて目線を上げると、トイレットペーパーを取り付けるためのプラスチック芯を取り出す帝人が見えた。
「脱げ」
再び俺の前に屈みこんだ帝人が短く言った。
「え、何…?」
「脱げと言ったのが聞こえなかったんですか?」
「だから、何を…」
「…もういいです、あなたはこれでもしゃぶっててください」
彼は冷たくそう言い放ち、手にしたプラスチック芯を驚き呆ける俺の口の中にねじ込むと、すぐさま俺のジーンズに手をかけてベルトのバックルを外し始めた。
もしや、やっとその気になってくれたのだろうか。だとしたら何故。俺が淡い期待を抱いたのも束の間、ズボンと下着を全て取り払った彼は俺の口にはめ込んだ異物を抜き出し、それを見るなりおもむろに眉根を寄せた。
「こんなんで足りるんですか?もっと濡らさないと痛いですよ?」
「えっ…」
「まあ、いいか。痛いくらいがちょうどいいかもしれませんしね」
帝人はこちらを見て弾んだ声で楽しそうに言ったが、その目は全く笑っていなかった。彼はそのまま俺の身体をくるりと反転させると、地べたに仰向けに倒れた俺に跨り、膝を掴んで高く持ち上げた。
そうすると自然、恥ずかしい部分が余すところなく露になり、俺は驚愕と羞恥心に顔をカッと熱くする。
後ろの窄みにあてがわれたひやりとする感触に息を飲むと、帝人が鼻で笑ったような気配がした。
「…もう一つ、僕の嫌いなもの。誰かに利用されることです。あなたの慰み者になるくらいなら、逆の方がマシだ」
「ひっ…!な、何するの帝人くん…っ、そ、んなもの、どうする気…!?――まさか、」
「何ビビってるんですか。あなた、これと同じことを僕にする気だったでしょう?」
「ひゃあ、…っ、や、やめて…!お願、だから、やめてくださ……」
「おかしいなあ。好きな人にしようとしていたことをされて嫌なはずがないのに」
「…っ!ひゃああっあ…うあああっ!」
冷えたプラスチックの塊がじわじわと孔にめり込んでいく圧迫感に、俺はカッと目を見開き身体を捩った。
いっぱいに伸ばされた襞が引きつれ、内部にひりひりと焼け付くような痛みが走る。まもなくぶつんと口が切れて熱いものが溢れ出した。
「イっ!痛っ!!あ、あああっひ、や、イタイやだこれ抜いてっ、抜いてよぉっ…!」
「あはは…ほら、だからちゃんと濡らした方が良いって言ったのに」
帝人は無邪気に大笑いしながら床に落ちた俺のコートを手繰り寄せ、ゴソゴソと探ってポケットに入っていたものを取り出した。ああ、あれは俺の携帯電話。
「ん…?うわ、あなたってば、うちの風呂場にまでカメラしかけてたんですね」
どうやら携帯のデータフォルダを弄っているらしい。モニターの光が映し出す帝人の顔は表の顔である純情少年とは尽くかけ離れ、悪魔のように歪んでいた。
「…だったらいいですよね。異物詰め込まれて勃起させてるあなたをここにちょっぴり追加するくらい」
付属カメラのフラッシュが起動し、続いてシャッター音が鳴った。パシャ、パシャパシャ。それは背筋が凍るような帝人の哄笑に混じって何度も繰り返された。
最後の抵抗とばかりに閉じようとした脚は無理矢理押さえつけられ、同時に折れた腕を叩かれる。激痛のあまり涙がぼろぼろと溢れて頬を伝った。
「ああ、そうだ。今更ですけど…最後に一つ」
帝人は俺の痴態を一通り撮り終えると、写真を収めた黒い携帯をパタンと閉じた。
「僕、悪人には情けはかけないタイプなんですよね」
「え……?…な、んで……?おれはキミを…愛して……」
「はは、知ってました?迷惑な愛情ってね、時に憎悪より残酷なんですよ?――折原臨也さん」
彼の唇は相変わらず綺麗な弧を描いていたが、俺を見つめる黒い瞳には静かな怒りが揺らめいていた。
20101225
それでも臨也は帝人くんが好きです
←