迷惑千万:03



「さて、何から始めようか…」

俺は帝人の両手を脱いだ自分のコートで縛り、彼のズボンのチャックを下ろしながらクスリと微笑んだ。下穿きをずり下ろし、中で小さく縮こまっていたものを指の腹で軽く揉んだ。

「ひゃ、あ…!つ、つめた…っ」

指を使って棹を何度か梳き上げてやると、帝人のそこはだんだんと硬度を増し始めた。
帝人は見られることが余程恥ずかしいのか、今にも泣きそうな顔で固く唇を噛み締めている。

「う…や、やめてくださ……はっ、ふ…!」

俺は怯えたように見当違いな台詞を吐く彼の唇を自らのそれで塞いで黙らせ、下腹部から上に向かって手のひらを滑らせた。痴漢プレイは嫌いじゃないけど、キミにはもっと喜んでほしい。
先走りを胸に擦り付けてくるくると優しく輪を描くように撫で、淡い色をした突起を軽く摘んだ。気持ちよくないわけはないはずだ。
それなのに何故だか、帝人は俺の腕の中で泣き出してしまった。

「やめてください…お願い…おねが、だから…」

「何で泣くの?そんなに気持ちいいのかい?だったら…」

話途中だった俺はいきなり下腹部に衝撃を受けて弾き飛ばされた。

「う…うぅ…」

個室の壁に背中を打ちつけ、そのままタイルの上に崩れ落ちる。同時に頭もぶつけたらしく、視界がぐらぐらと危うく揺れた。
というか今のは何。何、というか誰。一体誰がこんなことをした?

「――だからやめろって言ってるでしょう。まったく。ふざけないでくださいよ」

帝人は便器に腰を下ろしたまま力いっぱい俺の腹を蹴りつけていた。
縛ったのは手だけで、彼の足は全くの自由である。手の拘束だとて別段きっちりしたものではないから、力ずくで引っ張れば自力で外れるだろう。

「イ、タ…痛い…っ、み、かどくん、ちょっと…」

「僕のちんこに勝手に触った罰ですよ。というかあなたみたいに気持ちの悪い人、ホントに存在したんですね。東京はやっぱりすごいや。色んな人がいる」

驚くことに帝人はすっかり泣き止んでいた。というより本当に泣いていたのかどうかすら疑わしいくらいだ。
先程までとは打って変わってまるで別人のように冷たい目つきで俺を見下ろしてきた彼は、ぐったりと倒れこんだ俺の身体をスニーカーの底でこれでもかと踏みつけてくる。バキ、と肘の辺りから嫌な音がした。

「っく…痛……ぁ……」

「一つ訊きますけど、あなた、どうして僕が好きなんですか?」

「え……ひぅ……そ、れは、キミが…正臣くんと歩いているのをたまたま、み…見かけて」

「へぇ、いわゆる一目惚れってやつですか」

帝人は円らな黒い双眸をすうっと細め、便座から腰を上げて俺の真上に屈みこんできた。
彼を戒めていた俺のコートが解けてはらりと床に滑り落ちる。

「……な、に…」

「あなたに僕の何が分かるって言うんです?」

「ハ、ハハ……、そ…んなの、何でも知ってるよ…。き…キミの出身地も…こ、交友関係も…がっこ、で、委員をやってることも……好きな、女も…」

「そうですか。でもそれは僕の全てじゃないな」

帝人はじっとこちらを見つめたまま真顔で言い、俺の襟首をぐいと掴んで軽く壁から浮かせた。
目と鼻の先にある帝人の顔面に、どうしても胸の鼓動が早くなってしまう。本人は自覚していないかもしれないけれど、彼は本当に天使かと見紛うほど愛らしい顔立ちをしているのだ。
――勿論、今このときのように全身から険悪なオーラを滲み出させていなければ、だが。


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