迷惑千万:02



俺は携帯を開いて再度時間を確認した。
PM六時十五分。小学生が遊ぶにはいささか遅すぎる時刻であるため、大方日の落ち切った薄暗い公園には既にひと気はない。
帝人の家からここまでは徒歩で5分とかからない。
――本当にくるだろうか。
帝人は確かに行くと答えたが、果たして実際のところはどうなのだろう。来るつもりなどあるのだろうか。留守中の家を破られたことで弱気になって、一時的に動転してしまっただけかもしれない。
しかし仮に彼が来なかったとしても俺は別に痛くも痒くもない。帝人に会うために単にもう少し頭を使えば済むだけの話だ。
但し万一警察に通報されたら、その場合には少し厄介なことになる。この場に現れたとき帝人が一人じゃなかったら、公園の反対側から逃げた方が無難だろう。
俺がそんな算段をつけながら携帯を閉じて顔を上げたとき、公園の入り口にポツンと一つ人影が見えた。
帝人の年恰好と一致する小柄な人物がキョロキョロと周りを見回し、俺に気付いてぴたりと動きを止めた。

「やあ、ホントに来てくれたんだ?」

俺はブランコから腰を上げ、立ちすくむ少年の元へゆっくりと歩いていった。

「ふふ。嬉しいな、キミに会えて。やっぱり実物はものすごく可愛いね」

帝人は俺の褒め言葉がお気に召さなかったのか、顔をしかめて一歩後ずさった。

「あ、あなたですね、あんなことしたのは…。何なんですか、一体…」

「どーゆーこと?」

「でっ電話、かけてきたり…勝手に部屋に上がり込んだり…。僕に何か…恨みでもあるんですか」

「ううん、別に?キミのこと愛してるからだよ?駄目?」

「は、何を言って…」

友好的に差し出した俺の手からさっと身を引く帝人の反応が面白くて、俺は思わずクスクス笑ってしまった。

「照れなくてもいいのに。分かってる、俺たちホントは相思相愛なんだよね」

「は、い…?よく、意味が……」

「今日は来てくれてありがとう。ほら、恥ずかしがらないで。一緒に楽しいことしようよ」

俺はすんでのところで帝人を捕まえると、細い腰をぎゅうと抱きすくめながら彼の耳元に囁きかけた。帝人がぞくりと肩を震わせたのが分かり、何だか良いことをしたような気分になる。
俺は抵抗する帝人の言葉を軽く聞き流し、その身体を引きずって近くにある公衆トイレに入った。
まったく、彼はとんだ恥ずかしがり屋さんだと思う。
俺たちは恋人同士なんだからそんな変なことで気を使わなくてもいいのにね。俺は勿論その可愛らしい顔だけじゃなく、声も手足も尻も胸も性器も、キミの排泄物だって愛してるのに。

「やっやだ…やめてください…!訴えますよ…!?」

帝人を個室の一つに押し込んで後ろ手で鍵をかけると、彼は潤んだ目で俺を見上げた。

「あはは、何の話をしてるの?…ああ、コレのこと?」

俺が不自然にポケットへと伸びた帝人の手を掴んで無理矢理出させると、タイルの上に彼の携帯が転がった。俺は薄く笑みを浮かべ、躊躇なくそれを靴で踏みにじった。

「ひっ…何するんですか…!」

「あは、だってこんなものいらないでしょ?」

俺たちの愛を邪魔するだけだし。ね?俺がそう言って高笑いしながら足を何度も下に振り下ろすと、バラバラに砕けたプラスチックの部品が飛び散った。
帝人は俺を見上げて何か言いたそうにぱくぱくと口を動かしたが、言葉さえ出てこないといった様子である。
そう、やっと分かってくれたんだね。俺たちの愛の前にはどんなものも無力なんだ。


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