我が家のペット自慢
帝臨+杏静。
帝臨『キモダメシ』と微妙に続いています
「僕ね、最近ペットを飼い始めたんだ」
「え…それは奇遇ですね。実は私もなんですよ…!」
「へーえ、園原さんのペットかあ。可愛いだろうなあ…――猫?」
「あ、いえ。犬です」
「そっかあ。じゃあよかったら今度触らせてね!」
――という会話をしたのがまだ数日前のこと。
そして彼らは今、互いに自分のペットを引き連れた状態で相対していた。
「…うん、何だか想像とだいぶ違うよね、その子」
帝人は金色の毛並みをした巨大な“犬”を見下ろしながら、遠慮がちに言った。
それはパッと見、お世辞にも可愛いとは言いがたい。杏里が飼っているというから「さぞ大人しくて愛くるしいだろう」と過剰な期待を抱いていた自分は尽く間違っていたようだ。
しかし驚いているのは杏里の方も同様だった。
「えっと…そうですか?私のは、竜ヶ峰君のほどじゃないと思いますけど…?」
「え、そうかな。あの、どう?僕の。眼つきは悪いけど、凄く頭がいいんだよ」
帝人が明らかに飼い主バカと思われる発言をしつつ、手首に巻きつけたリードをクイと引く。こうすればその場で“お辞儀”するように躾けてあるのだが――
何故か今日に限ってふいと顔を背けられてしまった。
「アレ?ちょっと何してんの、ウザモン?」
「…おかしいですね。私のお利口なシズちゃんもさっきから唸ってばっかりで…」
「あ、それデフォルトじゃないんだ?」
「もう、竜ヶ峰君ったら…。シズちゃんは平和を愛するいい子なんですよ?」
「僕のウザモンもなんだかいつもと違うみたいだけど。――ひょっとして互いに気があるのかな?」
「ウザモンちゃんはメスなんですか?」
「いや、オスだよ?」
「うちのシズちゃんもオスです…」
「あれぇ、そうなの?じゃあ発情とかは有り得ないよね!あははははは」
「そうですね、ふふふふふふ…」
少年と少女によって交わされる会話は極々軽快なもので、端的にとれば単なるペット愛好家と言えなくもない。
しかし今はその軽快さが返って異様な空気をかもし出していた。
ひと気のない深夜、彼らが当たり前のようにつなぎ止めているのは――犬ではなく“人間”…。
20100827
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