水着、ラブ!



「海はいい、最高だ!際どい水着で恥部を隠した男女が溢れ、戯れ、真夏の浜辺で厭らしく乳繰り合っている!ああっこれだから海は堪らない!水着ラブ!俺は水着が好きだ!愛してる!」

「そろそろ変態発言は控えましょうか、臨也さん」

竜が峰帝人――情報屋の付き人である童顔の少年は、パラソルの影でのんびりと読書にいそしみながら顔も上げずに言った。
――ああ、暑い。何でこんなに暑いというのに臨也さんときたら無駄にテンションが高いんだろう。しかも発言が超暑苦しい。途中から話が海から水着にすり替わっているし、水着ラブってそもそも何だ。いっそのことこんな駄目男、どこかの山中にでも埋めてしまいたい。
当の臨也は、帝人のどろどろした心中など知る由もなく、太陽の光を弾いて眩しく光る砂浜の上で無邪気に微笑んでいる。

「あっははー何言ってるのさあ帝人くん!キミだって多少なりとも俺の水着ラブ説に賛同してここまで同行してくれたんだろ?」

「違いますよ。僕は臨也さんが逮捕されないように見張りに来ただけですから」

「え、何で?俺はただの海辺愛好家なんだから逮捕なんてされるわけがないだろう!あ、帝人くんもしかして俺のこと好き?照れるんだけど」

うわっ、何なんだこの勘違い野郎。
しかもさっきから水着だの乳だの連呼しやがって、周り見渡してもお前ほど怪しい奴どこにもいないぞ。

「…ていうかまずそのぴちぴちの競泳パンツをどうにかしたらどうです?キモい事この上ないんですが」

もっこりとかもっこりとかもっこりとか!と直球で釘を打ち込んでみるものの、当の変態は特に心外そうな様子も見せない。それどころか己のもっこりを自慢げに披露し始める始末。

「いいだろう、このもっこり!洗練された大人の男の色気っていうの?それがにじみ出てるよねえ!」

「にじみ出てるのは露出癖と変態臭だけです。今すぐ穿き変えてください」

帝人は文庫本を台の上に置きながらハアアアアアーと盛大にため息をつき、手元のバッグから何か布のようなものを引っ張り出した。

「穿きかえるって何に?…ってもしかしてその、白地にピンクのハート柄の海パンに穿き変えろとか言わないよね?」

「何か問題でも?」

「え。それ…流石の俺でも恥ずかしすぎるよ」

「何故です?スケスケの薄い布で作ってあるので濡れるとくっきり、露出狂のあなたでも満足のいく仕上がりだと思いますが。しかも股間には懇切愛情を込めて『人、ラブ!』と刺繍しておきました」

帝人が話せば話すほど、臨也の顔からはさーっと血の気が引いていく。

「あああ愛情っていうか…それ嫌がらせ以外の何物でもないよね?」

「不満なんですか?ああ、何だったら『水着、ラブ!』に書き換えましょうか?その方がより貴方らしいですもんね変態的な意味で」

嘲りを込めてクスリと笑う帝人はあくまで冷酷だったが、臨也はそこにどうしようもないエクスタシーを感じていた。




20100611


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