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3



『うがぁ!!!』

「わっ、ビックリしたァ…○どうしたの?」


食堂で食事を終えた後、ボケーっと新聞やら手配書を見ていたら、突如としてここ数日の悩みのタネの人物の手配書が出てきた。

くっ…不敵な笑みを浮かべやがって…格好良いんだよコンチクショウ!


だなんて情けない考えを吹き飛ばしたくて声をあげたら、隣のベポを驚かせてしまった。

ベポに謝りながら、そのもふもふで癒されたくて抱きつく。あー…癒されるわァ。


「最近○元気ないね、オレ相談乗るよ?」

『んー…ありがと。でも大丈夫だよ、ベポのそのもふもふと肉球のぷにぷにさえあれば私は生きていける』

「んー…よくわからないけど○の役に立ってるのならいいや」


『今日ブラッシングしてあげるね』


もふもふを守るのも私の役目だ。

ベポのフワフワを堪能しながら今日の出来事を互いに報告のように会話する。

今日はどうやらお昼に甲板でひなたぼっこの予定らしい。ずるい、私もしたい。


でもどうやら船長もいるみたいで、とりあえず遠慮しておく。

ここ数日、実は地味に船長を避けていたりする。わざとじゃないと言えば嘘になるけれど、なかなか私も不寝番もあるし仕事もあるしで顔を合わす機会が皆無なのだ。

あとは、船長の食事時間を避けて食べにきているのが確信犯って部分だとは思うけれど。



ベ「キャプテン、最近元気ないよ」

『へェ…気候の変化も特にないし、気になる本でも買ったから夜更かしが続いているとかかなァ』

「んー…っていうよりも、イライラしてる?のかなァ?あれは」

『でも特にバラされてる人いないよ?』

「そうなんだけどね、んー…今度○も確認してみてよ。オレ、思うんだけどキャプテン、多分○の−−」


「敵襲だァァ!!」


突如として、おそらく外からシャチの大きな声が聞こえてきた。敵襲、という言葉。


その言葉を聞いた途端、まず始めに船長の顔が思い浮かび、その後自分の体の中の血が沸き立つ感覚が巡る。

ハート海賊団としての自覚を感じてもう長くなる。


『っ、ベポ行くよ!』

「アイアイ!」


自分の得物を手に走り出す。甲板ではすでにシャチとイッカクと数名の船員が敵の海賊とやり合っている。

乗船されていることに気がつき苦虫を潰しながら、イッカクの後ろを狙うクソ野郎を飛び膝蹴りで沈めてやった。


イ「っ、○!」

『おじょーさん、お怪我はァ?』

イ「もう、あんたねェ…こんな時までふざけないの!」


『ふふん、ヒーローの登場!ってか?』


そのまま私は鞘から抜かれていない自身の刀をブン!と後ろに振りかざし、襲ってきた男の鼻っぱしを折る。

鼻血を出して倒れる男の鳩尾に鞘を思い切り突き立てて、男は悶絶した。

とりあえずこのままじゃ可哀想だから気絶って形で眠らせてあげようっと。



シ「○!」

『ほーい!』

ぺ「お前ら2人は敵船に乗り込め、お前らの脚力なら行ける」


『アイアイ!』


ベポの真似をしつつペンギンの指示に従い、私はカランと音を立てて鞘から静かに刀を抜き去る。


『イッカクー』

イ「何?」

ひょい、と鞘を投げてイッカクに渡す。


『これ頼むわァ、んー…医務室に置いといて!ついでにその横腹見てもらいなね?』


ニッと笑うと、彼女は苦笑いをこぼしながら小さく"やっぱり○には敵わないわ"と言ってそのまま走り出した。

イッカクの横腹、おそらく軽い切り傷と酷い打ち身だろう。それをやったと思われる男は私が容赦なくボコボコにしてやりますわ。


『ベポォ』

「アイヤー!!ん?なァに?」


素早い動きのベポを呼びつつ、近くの敵をなぎ払っていると、既にシャチが飛び出す態勢に入っているので私も慌ててベポを呼び寄せる。


『投げて!』

ベ「アイアイ!」

シ「ずりぃ!」

『シャチは後から来て?先に切り込んでくるからさ、頼むよー?』


ベポに思い切り投げてもらい、私は男達の集まる甲板へと静かに降り立つ。

私の周りに人だかりの様に和になり集まる。逆に好都合だと心の中でニヤリと笑いつつ、ぺこりと頭を下げた。



『お邪魔します、そして…さようなら』


男達の怒号をBGMに私は刀を構えると、思い切り走り出して駆け回る。円を描く様に走り抜けて、最前列の男達がバタバタと倒れて行く。

そこへシャチが来た。かと思ったのに私は唖然とする事となる。



「こりゃ、船長のお出ましってか!!」

「こりゃついてるぜェ!」


『ちょ、何で来てんですか!?』


まさかの我らの船長、トラファルガー・ローのお出ましだ。

おいおい、何故に貴方が最前線に来てるんですか!?


『シャチは!?』

ロ「あいつなら自船の甲板を守ってる」

『あ、ホントだ。って!!だからって、船長自らが最前線に来なくても!』


切りかかってくる男をさっくりとのして、そのまま私は言葉を続ける。

私も船長も話しながら敵を倒すなんて、何とも相手に失礼極まりないとは思いつつも、正直無名の海賊が束になろうと我らハート海賊団に敵うはずがないのだ。


ロ「うるせェ、俺がお前と前線に出てやるんだから怪我したら殺す」

『いやいや!トドメを刺そうとしないでくださいよ!』


船長に向き合うと、船長もすこぶる機嫌が悪そうに向かい合わせとなる。


「「痴話喧嘩してんじゃねェ!」」


『痴話喧嘩じゃねェよ!ぶっ殺すぞゴルァ』


敵に中指を立てて威嚇していると、背後から思い切り斬りかかって来る男の気配と、船長の後ろから斬りかかって来る男が見えた。

私は迷いなく船長に斬りかかる男を船長の肩を超えて忍ばせていた投げナイフを投げた。


次の瞬間、私はそのナイフを投げた腕を引かれて船長の腕の中にダイブする。

背後で苦しむ男の声が聞こえた気がした。


ロ「自分の身を案じろ」

『何言ってるんですか、私の命より船長の命の方が何倍も大切なんですよ。それにあの男、船長の背中に傷でもつけたら肉片にしてやります』


ロ「…お前に傷をつけた奴は海王類の餌にするんじゃ足りねェな」

『っ……』


真剣な顔でそんなことを言われてしまえば、たとえ仲間という意味だったとしても、浮足立ってしまいそうで…思わず息を詰まらせて見つめ上げてしまった。

そうすると、何を思ったのか船長はいつもの悪ぅい笑みを浮かべて喉を鳴らした。


ロ「見惚れてんじゃねェよ」

『っ……か、ん、ち、が、い!!!』


するりと船長の腕の中から抜け出して、私は刀を握り直す。船長はまだ機嫌良さそうに笑うばかり。

ベポめ、どこが元気がない。だよ、全然元気じゃないか、イライラもしてなくて上機嫌だし。



『っしゃこらぁ!さっさと倒してお宝奪って、次の島で豪遊してやる!!』

ロ「ククッ…」


その後、やたらと機嫌の良い船長と共に敵を全滅させると、わたしはルンルンでお宝を漁った。

ま、特に宝石とか貴金属系は換金目的だし武器もいいのなかったからさっさと詰めて、ベポやシャチと共に船から運び出した。


ふんふんふーん、私は今回船長の次に功績を残したから結構配分貰えてホックホク!

スキップで医務室に向かおうとすると、何故か船長に捕まった。


ロ「忘れてねェよな?」

『へあ?』


ロ「怪我したら、殺すって」


……おわったわ、私の人生。

実は、戦闘中に腹部に重ーい回し蹴りと、腕に軽い切り傷を食らってしまったのを黙っていたのだ。

黙っていたのに、見事にばれました。ええ、いつもこうなんですよ、船長は必ず私の怪我病気を見抜く。


わ、私が誤魔化すの下手くそなんじゃない!船長が医者として鋭すぎる観察力を持っているのがいけない!


『そ、そんなァ!!!』


ズルズルと引きずられる様に歩き出す。このコースは医務室じゃなくて船長室じゃないか!?

擦れ違いざまにイッカクが苦笑いをこぼしながら(あれ、デジャブ?)私に鞘を渡してくれた。


手厚すぎる(それはそれは、声にならない叫びが出るほどの)治療を終えた頃には、私は疲労で睡魔に襲われて眠りについた。

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