その通りは華やかな喧騒で溢れていて、きらきらと輝いていた。
「うーん、いか焼きおいしー」
その喧騒の中にいた四季は屋台で買ったばかりのいか焼きを頬張りながら満足そうに呟く。
通りの両端にずらりと並んだ屋台を見つけたのは偶然だった。
すっかり忘れていたが、今日は毎年恒例の祭りだったらしい。まだ日も沈みきっていない早い時間であるにもかかわらず、辺りは人混みで賑わっている。
見つけた以上、寄り道しないという選択肢は消え失せた。
「それ食ったらさっさと帰るぞ」
四季の寄り道に無理矢理巻き込まれた壱儺は不機嫌そうに眉を寄せる。
「え、何言ってんの!?来たばっかじゃん!」
「全力で楽しむ気でいるんじゃねぇよ、アホ」
信じられないと言った表情で見る四季を壱儺はばっさりと切り返す。
「壱儺も楽しんだらいいじゃん。嫌いじゃないっしょ?こういうの」
もぐもぐと口を動かしながら四季は首を傾げる。
その質問に少しだけ返答が詰まる。
「まぁ…嫌いじゃねぇけど…」
「ね?ほら、行こう。そして私に奢れ、財布出せ」
「てめぇ、しまいには殴るぞ」
「暴力はんたーい」
あはは、と笑う四季とその姿を追う壱儺の姿は人混みへと紛れていった。
「四季」
「んー?」
辺りが大分暗くなってきた頃、真面目な壱儺の声に四季は振り返る。
「そろそろ帰るぞ」
「えー」
「この祭り、最後は花火大会で終わるの忘れたのか?」
その言葉に四季の表情がすっと消えた。そして目を伏せ、残念そうに笑う。
「忘れてたよ…帰るしかないね」
そのまま黙って来た道を歩いていたが、あ、と突然声を上げる。
「最後に1個!ちょっと待ってて」
「おい、四季」
四季は壱儺の制止も無視して一度人混みに消えたが、しばらくして戻ってきた。
「おめぇ、何して…ー!?」
話の途中で目の前に差し出されたものに驚いて一瞬黙る。
四季の手には小さなりんご飴。
「はい、今日はありがと」
目を細めて笑う四季に壱儺は微かにため息を吐きながらそれを受け取った。
「弐弥くんや三悧くんにお土産買って帰ろっかなー」
「まだ買う気か」
そんなやりとりをしながら2人の影は人混みからゆっくりと遠ざかっていった。