新年の朝は穏やかに変わり映えなく迎えた。


「明けましておめでとうございます三悧。今年もよろしくお願いしますね」
「おめでと、弐弥さん。こちらこそよろしく」


起きてきた三悧に朝食の準備をしていた弐弥はにこりと微笑みながら挨拶をする。
そして、ああそうだと準備の手を止め、三悧に小さな封筒を差し出した。


「はい、お年玉です」
「あ…ありがとう」


少しだけ戸惑いつつも三悧はお礼を言いながらそれを受け取る。
ここに来てからこれを受け取るのは3回目になる。毎年の恒例だった。
最初断った時、子供が遠慮するな、と怒られて以来、子供扱いも複雑なものだが三悧は素直に受け取ることにしていた。
弐弥だけならともかく他全員がくれるのものだから、なんだかくすぐったい感覚がして未だに慣れてはいない。


「あれ、他の皆は?」
「ボスは部屋に。四季と壱儺はボスのところですよ。お年玉をたかりに行っています」
「いい歳して何やってるの、あの2人」


呆れたように三悧は呟く。
これも毎年恒例だ。



お雑煮のいい香りがしてきた頃、リビングへと四季がやってきた。
その表情は満足げで、手にある封筒から結果が良好なことが分かる。


「たいりょーたいりょー。あ、三悧くん、あけおめー」
「おめでと、四季さん」


軽い挨拶を済ませると四季は手にある封筒とは別の封筒をポケットから取り出し三悧に差し出す。


「はい、三悧くんにもお年玉」
「ありがとう。四季さんのそれは成果?」
「容赦なかったからな、四季」


四季が答える前に別の声が答えた。
目線を四季の後ろへと向ける。


「それあんたが言う?」
「壱儺さん、あけましておめでと」
「ああ…おめでとさん。ほらよ」


そう言って壱儺は雑にお年玉を渡す。


「お前も後で零さんとこ行ってこい」
「分かった。壱儺さんもありがと」


壱儺は微かに笑って三悧の頭をポンと撫でた。


「おや、ボスはまだ部屋ですか?」


キッチンから顔出した弐弥が尋ねる。


「へそくり取られて意気消沈中」
「ほどほどにしてあげなさいと毎年言っているでしょう、2人とも」


あっさりと答える四季に弐弥は呆れたようにため息を吐く。


「とりあえず…お雑煮出来ましたから呼んできてもらえますか?」
「…わかったよ」


少しだけ面倒がりつつも廊下に出た壱儺をなんとなく見送っていると肩を叩かれる。
振り返ればそこには四季。
封筒を顔の近くに持ち、楽しそうに話し出す。


「お正月だし、これ使ってご馳走皆で食べようね」


まずは弐弥くんのお雑煮だけど、と四季は笑った。


変わり映えもしない平凡なお正月。
しかしそれはとても暖かくて、心地よかった。


(…今年も変わらないといいな)


浮かんだ笑みをそっとマフラーで隠しながら三悧は密かにそう願った。








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