休みの日、十座くんの部屋で二人きり。(十座くんの部屋というか十座くんと摂津くんの部屋)
 それぞれ台本を読んだり、スマホゲームをしたりして過ごしていた。

「ねぇ十座くん」
「んあ?」

 十座くんの名前を呼ぶと、読んでいた台本から目を離し、間抜けな声を出してわたしを見た。

「ポッキー食べる?」
「!いいのか…」

 わたしが持ってきたポッキーを見ると、目を見開き反応を示した。

「今日はポッキーの日なんだよ!」
「ポッキーの日?」
「そ。11月11日」
「ああ…」
「うん、だから一緒に食べよ?」
「? おう…」
「はい」
「ん、」

 ポッキーの日、十座くん知らなかったのかな。でもこういうの十座くん興味なさそうだよね…。○○の日、みたいなの。
 一緒に食べようっていう意味、絶対わかってないよね。だって頭の上にハテナが見える。
 なんだか少しかわいいなと思いながら、1本のポッキーを十座くんにくわえさせる。そして十座がポッキーをくわえたのを確認するど、わたしは反対側のチョコがついていないほうをくわえてみた。

「!?」

 瞬間に十座くんの目が見開いた。十座くんが驚いた衝撃でポッキーが途中で折れてしまった。お互いに加えていたポッキーを食べ終えると、十座くんが慌てた様子で声を出した。

「な、なにすんだ…っ?!」
「えー?ポッキーの日だからポッキーゲームしようかなって」
「そっ、それを先に言え」
「あは、ごめん」
「で、その、なんなんだポッキーゲームってのは…」
「………はい?」

 まさかとは思ったけどポッキーゲームって知らないわけ…なくもないのか?十座くんだし。

「ポッキーの端と端をくわえてお互いに食べ進めて先に口を離したほうが負けってルール。知らない?」
「知らねえ。…おい、じゃあポッキーを離さないまま食べ続けたら…」
「うん、キスすることになるよね」
「な…っ!」

 本当に知らなかったパターン…。
 しかもあれ…。十座くん、心なしか顔が赤い…?しかも黙っちゃった…

「十座くん…?」
「キ、キスなんてゲームですることじゃねぇだろ」

 そこ?

「いいじゃん、付き合ってるんだし」
「別にゲームじゃなくても、」
「でもせっかくポッキーの日なんだからやろうよ〜!ほら、」
「な、んっ」

 絶対いいって言わなさそうだから無理やりポッキーを十座くんにくわえさせた。

「はい、そのポッキー離したら負けね!」

 断念したのか大人しくなったのを確認すると、わたしは反対側からポッキーをくわえた。

 そしてわたしはじりじりとポッキーを食べ進めていく。あと何センチか、なんてわからない。十座くんが食べ進めているのかもわからない。でも十座くんの顔が確実に近づいてることはわかる。

あと少し、

そんな時だった。急にドアが開き、横目でドアのほうを見ると、摂津くんがいた。

「何やってんだお前ら」

 あ、また折れちゃった。

「ポッキーゲームだよ。摂津くんは知ってるでしょ?ポッキーゲーム」
「知ってっけど…。ってそうじゃねえ!ここがどこだかわかってんのか!?」
「俺の部屋だ」
「いやそういうことを言ってんじゃねぇんだよ。俺の部屋でもあるんだよ、いちゃつくなら余所でやれ…!」

 なんで俺が兵頭がキスしてっとこ見なきゃなんねーんだよ、って文句を言いながらも部屋の中に入って自分の机に向かう摂津くん。そんなに見たくないなら違うとこ行けばいいのに…。

 邪魔されてしまったので、ポッキーゲームは諦めて、わたしは摂津くんが後ろを向いているのをいいことに十座くんの唇に軽く自分の唇を重ねた。(あ、チョコの味がする)

「っ…!」
「えへへ」

 さっきよりも顔を赤くする十座くんがとてもかわいかった。


(おいてめぇら、いちゃつくなら余所でやれっつったよな)
(…うるせぇ)
(…摂津くんってすごいね(摂津くんの後頭部には目でも付いてるのかな…?))
(あん?)



【あとがき/設定】
ポッキー日のお話でした。開設前に練習がてらに書いたものです。
十座とは同い年で付き合ってまだ間もない。寮に行ってみたいという彼女を十座は休みの日に招いた。それがちょうどポッキーの日で彼女はちゃっかりポッキーを買って来ていた。もちろん監督やみんなの許可は得ている。実は彼女と万里は同じ学校のクラスメイト。という設定です。




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