「あ、時間だ!」
Tシャツにジーパン。
おしゃれもへったくれもない格好で私はサンダルをひっかけた。
これからも
中学、高校、大学…
そして就職。
ずっと同じ道をたどるはずだった。実際、大学までは一緒だった。
でも、今は違う。
彼が今毎日通っているのは一応“一流企業”と名のつく会社。
私が今毎日通っているのは、家から一番近い駅。
要するに“お迎え”ってやつです。
お互いの実家が向かい同士で、しかも同じ学校だった私たちにはお迎えする、されるなんてことは今まで無くて、毎日私を包むのは新鮮な空気。
そんな空気のなか改札の向こうからやってくる君はなんともない、外モードのままのかっこいい顔。
“おかえり”って言うと“ただいま”なんて返ってきて、一人はにゃーんなんてしてしまう(あれ、古い?)
緩んだ私の顔を見て気持ち悪い、なんて小言を零す彼を一発殴る。
するとね、彼は手を差し出して私に返すの。
「ごめんごめん。さ、帰ろ?」
彼が決まって差し出す左手には銀色の指輪。
そして、私の左手にも彼と同じ銀色の指輪。
まだゴールしたわけではないから永遠のものではないけれど、お揃いの、未来への約束。
私はそれを確認して少し頬を緩ませると彼の手を握る。
それから、もうお決まりになったセリフ。
「スーパー、寄るからね」
これからも
(ずっと、一緒に)
20090615
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7/25〜8/10の拍手お礼でした。
グレープフルーツはよく時間軸が飛びます。
20090810 しろ
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