「寒いな。」

君はひとつ、息を零した。


ノーザンクロス


「嘘、寒くなんかないよ。」

夏空の下、夜を歩く。
満天の星空を二人で歩く。

「寒いよ。ほら、息白くなってんじゃん。」

君はもう一つ息を零す。
白くなるわけなんかいけど、私はそれを見届ける。

「寒くないし、なってない。」
「つれないねぇ。」

白いポロシャツの裾を風に遊ばせて、君は空を仰いだ。
襟元からのぞく校則違反の黒いシャツ、少し伸びた襟足、部活で焼けた本当は真っ白い肌。

こんなにも愛しい。

「ねぇ、手、繋がないの?」

視線をこちらに戻して、前へと進む足を止める。
困ったようにまゆを下げて、苦しそうに苦笑い。

「俺がいっつもやんの、嫌がんのお前じゃん。」

そう、私は君の手をいつも嫌がる。
だって、私と君はそういうのじゃないから。
ちゃんと言ってくれないのに手とか繋ぐの、嫌だから。

だけど、もう限界みたい。

「え……。」

一歩踏み出す。君が目を見開く。
君の手を握って、そっと腕を抱きしめた。

「ねぇ。」
「…ん?」

君が歩きだす。さっきよりもゆっくりと。

「寒いね。」
「……うん。」

もう一度、空を仰ぐ。
のぞく耳は赤かった。


ノーザンクロス
(ねぇ、きづいて?)


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忘れたくなくて書きました。だいぶシチュエーションは違いますが!
ちなみにノーザンクロスは北十字、白鳥座のことです。

20090809 しろ



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