私は勇者。
魔女に攫われたお姫様を救ったり、村に棲みついてしまった怪物を倒したり、たくさんの人を救ってきたの。
今日も塔の一番上に閉じ込められた子供たちを救う!

はずだったんだけど……


「ひっ………」

腹部に走る強烈な痛みに声も出ない。
膝から崩れ落ちた私を見て、目の前の男が嫌な笑みを浮かべる。

私、刺されたの?私、死ぬのかな。
子どもたちの泣き叫ぶ声が聞こえる。

もう少しだったのに、油断した。
ごめんね?結局助けられなかった。
おまけに人が死ぬところまで見せちゃって、本当にごめんね?

視界がだんだん暗くなる。本当に最期なんだ。
瞼が強烈に重くて、抵抗しようとしても無駄で。
もう少しで閉じる…そんなとき

「………え?」

周りの景色がピタリと止まった。
男は嫌な笑みのままで止まってて、音すらも聞こえない。

いつの間にか腹部の痛みもなくなっていて、でも体は動かない。

「なん、なの?」

声を絞りだすと、目の前の文字に思考が凍結した。



GAME OVER



『あーぁっ、やられちゃった!』

景色の向こうから声が聞こえる。誰かも全然知らない声。

ただでさえ重たい体を動かして、声が聞こえる方向を睨む。

生まれて初めて、自分の目を疑った。

『やっぱり似せすぎたかなぁ?なんか自分が死んじゃったみたいなんだけど』
『まぁ良いんじゃね?その分リアルだし』
『そーゆー問題?』


私と同じ顔の人が楽しそうに笑ってる。

ケラケラケラ
楽しそうな笑いがまた響く。

『やり直さないの?』
『だってこいつ強いじゃん。もうやる気なくなっちゃった。』
『じゃあ俺やる。』
『お、頑張って!』


目の前の男の子が何かを持って指を動かす。
すると、目の前の文字が変わる。


Continue?


『よしっ、んじゃひとつやってやりますか!』
『やれっゲーマー!』
『うるさいー』


矢印がyesに移動する。目の前がまた暗くなる。

ピッ


勇者さん
(お次の勇者さん、出番だよっ!)


20090801 しろ



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