「ねぇ、好き。」

溢れだした想いを託した私の言葉が屋上の空へと溶けていく。

「好きだよ。」
「……。」
「好き!」
「………。」
「好きなの。」
「…………。」

それはもう、次々と。溢れては溶けて、溢れては溶けて…。
そうして出来上がったのはオレンジ色した甘い空気。私のまわりだけにとりまいて、隣の君には届いてないけど。

別に無視されてるわけじゃない。(大体無視されてたら悲しいし!)
ノイズキャンセラ機能だっけ…?とにもかくにも今君は最近手に入れた高性能のヘッドフォンのおかげで私とは別の世界の中。

聞こえてないのを良いことに、私が勝手に言ってただけ。パンクしそうな想いを吐き出しただけ。

それなのになんだか頬っぺたが熱くなって、今すぐにでも蒸発しそう。

「…ずーっとずーっと、好きなんだよ。」

もう何年目?
そう呟きたくなるくらいの長い長い片想い。
今まで誰にも、もちろん本人にも言ったことなんてない想いを吐き出したら、少しだけ心が軽くなった。

夕空に藍色が混じりだす。
月も夜に傾きだして、そろそろ家へと帰る時間。

散らばってた本やらペンやらを鞄につめこんで帰宅準備を整えて、うつむいた君の肩に手をかける。

「かえ、うわっ…!」

帰るよ、なんていつも通りの言葉をかけようとしたのに、勢いよく体を起こした君のヘッドフォンがいきなり私の耳にかけられる。

がちゃがちゃと無機質な音のあとに訪れるのはノイズを取り払った無音の世界。

そう、思ってたのに。

「あ、れ…?」

運動部の声が聞こえる。吹奏楽部が練習する音が聞こえてくる。
風の音が聞こえる。

「…聞こえてるっての。」

目の前にはまだヘッドフォンに手を掛けたまま明らかに顔を真っ赤に染めた君。

君のそんな顔を見て、さっきまでの自分の行動を思い出して私も自分でもわかるくらい顔に熱が集まった。

「聞いてたの…?」
「う、ん。」
「全部?」
「うん。」

目を逸らそうとすると、君の真剣な瞳が私の顔をのぞきこんで、ヘッドフォンにかけた手で顔の向きを固定される。
流石に成長したと言おうか、小さい頃はこれくらい簡単に振り払えたのに今はそうはいかなくて。

仕方なく抵抗するのを諦めると、耳元で何かボタンを押す音がして、全くの静寂が訪れた。

「        」
「……え?」

さっきまで全てが聞こえてたはずなのに今は君の声すら聞こえなくて、聞き返そうとするといつの間にかまさに目と鼻の先に君がいて、私の唇を何か柔らかいものが掠めた。


夕空ロマンス
(俺も、好きだよ。)


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はじめちゃんへ捧げます!リクエストにそえなかった感満々で申し訳ないです…!!
こんなんで良ければ貰ってやってください('ω`)

20090902 しろ



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