プロローグ
「ねえ会計くん、ちょっとそこののり取って。」 「やーだ。自分で取れば?」 「…けち。ずぼら!ずんべらぼん!!」 「会計くんじゃなくて俺には名前があるっての!ってかずんべらぼんってなんだよ!!」
いきなりこんな会話でお恥ずかしいのだが、私たちは私立○×学園の生徒会である。
清く正しく誇りを持って。
お決まりの文句を最後だけ取り替えたような校訓を元に、生徒たちを正しい方向へと導いてやる。それがわが校の生徒会の役割で、日々その目的のためにそれぞれの仕事をこなしている。
まぁ、言ってしまえば典型的な生徒会、である。
「良いじゃんあんたはれっきとした会計委員長なんだから。私は間違えてないもんね。」 「なんだよ俺が会計委員長になった瞬間呼び方変えやがって。だいたいお前執行部でもないくせに何で毎日ここにいんだよ…!」
と、まぁここで。 こいつの言う通り実は私は生徒会“執行部”のメンバーではない。
いや、なんでさっき私たちは生徒会だ、なんて言ったのかって、この学校の生徒であるという時点で実は生徒会のメンバーには自動的に加入しているからだ。うん、嘘なんてついてはいない。うん。
で、さっきからがみがみ私と言い争っているのは昔っからの腐れ縁野郎。凛太郎だ。 ちなみに“りょうたろう”ではない。“りんたろう”だ。
この名前が小さい頃の私は大好きで、りんりんなんて可愛らしいあだ名でずーっと彼を呼んでいたものだ。 (今じゃ考えられないけどね…!)
「良いじゃん。ちゃんと来たらあんたの手伝いしてるんだし。」 「手伝いってお前俺の邪魔するだけじゃん。」 「じゃ、邪魔だなんていつ私が邪魔したってのよ!」 「はぁ!?常日頃邪魔ばっかしてるくせになに言っ」
がんっ!
「いったぁ!!」
いきなり頭にがつんとした重みが降ってきて、思わず情けない声と共に二人同時に頭を抱え込む。
凛太郎ならともかくも、普段の私なら誰かにこんなことをされた暁には間違いなく相手を睨み付けて反撃開始だろう。いや、睨む前につかみかかるかも…でも。
「はい終わり。仲良いのは歓迎だけど、全部外まで聞こえてたよ?」 「朔くん…!」
この生徒会のトップ、つまり生徒会長の朔くん。 もとい、私の“好きな人”に向かってなんて、そんなことはそらできやしないのだ。
(攻撃どころか心臓が痛くて大変です。)
2010/02/28 21:29
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