ある神父A氏の主張(青の祓魔師) | ナノ
0.75
 薄らぼんやりとした教会の中で一人の男――教会の責任者である神父――が全く面白くないという表情で椅子に深く腰掛けていた。いかにも不機嫌ですという面持ちで足を組み膝の上で頬杖をつく。手によって押し上げられた唇の端はひん曲がり更に神父の表情を不機嫌なものに変身させていた。せかせかと落ち着かない様子で組んだ足の先を動かす。そして時折重いため息をつくと鬱陶しそうに目を閉じた。明らかに見ている者を不快にさせる態度だ。こんなあられもない姿を通う信者に目撃でもされたら大いに嘆かれるのだろうが今は誰もいないので気にしないことにしておいた。
 普段柔和で温厚な神父の様子がこんなにも乱れてしまった理由は、三十分ほど前にやってきた招かれざる訪問者の所為である。朝のミサが終わり、教会の礼拝堂が空になった頃、突然教会のドアが無遠慮に叩かれたかと思うとずかずかと男が数人入って来た。不穏な雰囲気と共に入って来た男達を目にした神父は内心でため息を漏らし、またかと忌々しそうに呟いた。それから、やれこの教会の神父は不良だ、思想がおかしいだの何だのと一方的に言われた。言い返してやろうと思ったのだが、反発した所で相手をヒートアップさせるのは分かりきっていたので唇をかんで我慢した。すると、こちらが言い返さないのをいいことに、更にひどいことをあれこれ言われた。何を言われたかは鮮明に覚えているが、思い出しただけで腹立たしいのでもう忘れたことにしておく。さもなければ、怒りの熱が再び湧き上がり何かに当り散らしてしまいそうだ。神父たるものいつも心は健やかに保たねばならないと分かっているが、神父だって人間だ。腹立たしいこともあれば、その感情を爆発させて物に当り散らしたくなることだってある。ただ、それはあまりにもみっともないので我慢しておく。
「ふーっ」
 再び体の底で沸き立ち始めた怒りを少しずつ外に出すように長く息を吐く。長く吐いたついでに長く息を吸った。先ほどここに来た男達の思想に間違いは無い。しかし、だからといって今ここにいる神父が独自に持っている思想を否定していいというわけではない。
 神父は目を閉じ、自分の思想を脳裏に描きながら神の愛を手に入れようと戦ったサタンは、神に地獄へと堕とされた時どう思ったのだろうとその神父、スメラギ アモンはいつものように考えていた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -