お題1(花言葉) | ナノ
 毛利元就という男は、途方もないほどにかわいそうな男だと思う。
親からの言葉を受け継いで国を大きくするための過程で、何かを欠落させてしまった。その何かとは感情のうちのいくつかと、そのほか人間が人間らしくあるための物が数個。
昔から側にいるというのに、それに気づいたのは彼がすべてを失った後だった。後の祭りとはまさにこの事で、私は己のふがいなさを呪った。
 だが、前まで彼は私の前ではある程度感情は表していたから、気づきにくかっただけかもしれない。彼はあの時残り少ない感情の欠片を私に傾けていてくれたのか。そう思うと、不謹慎ながらも自分は特別だったのかと自惚れる。そんな事は在りはしないと知っているのに、思ってしまうのは人間の性だろうか。
 だが、最近の彼といえば私に対してもどことなく素っ気ない。何だかやたら他人行儀のような気がして、何か不吉な予感を感じさせる。そろそろ、私に傾けてくれる感情すらなくなったか。それとも、単に彼の中で私が特別でなくなったか。どちらなのかは、私が知り及ぶことではない。だが私は、傾ける感情がなくなってきたという理由であって欲しいと、願った。そうでなくては、今度こそ完全に彼が孤立してしまうのだ。

あざみ色の夢

4/19:あざみ(孤立)
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