「向日さん、頭に葉っぱついてますよ」
「え!?マジ!?取って取って!」
「はいはい」
やれやれといった感じで俺の頭に手を伸ばした後輩を見つめ、ふとそういえばなんでコイツと仲良くなったんだっけ、と考えてみた。
ちょっと生意気だけど、なんだかんだ言って優しいこの後輩と仲良くなったのは確か…相方の一言からだった…ような気がする。
「日吉と岳人って案外合う気がすんねん」
「は?」
3年になってすぐの頃。
部活が休みだったから、侑士と寄り道したりしながらだらだら帰っていると、いきなり喋ったことのない後輩と俺が合う気がするとか言い出した侑士。
名前と顔しか知らない後輩と合う気がするとか言われても、ぶっちゃけ困る。
「日吉ってさ、あれだろ?キノコだろ?」
「失礼なやつやな。…まぁ、そうやな」
「俺喋ったことねぇんだけど。つか、侑士は喋ったことあんの?」
「ない」
「根拠もねぇのに合いそうとか言ってんじゃねぇよ」
独特な髪型をした後輩の顔を思い浮かべて、やっぱり喋ったことないなと再度頭ん中で確認しながら話しかければ、侑士も喋ったことがないとか言い出した。
なんで喋ったことがないヤツと合う気がするとか言えるんだコイツ。
「確かに喋ったことはあらへん。けどな岳人、氷帝の天才と謳われる俺が言うんや!岳人と日吉は絶対に合う!」
「あー、はいはい、そうですかそうですか」
「え、反応冷たない?」
「お前が下んねぇこと言ってるからだろ」
口先ではそう言って侑士をあしらっていたけれど、心の中ではちょっとだけ、日吉と関わってみたいと思う自分がいた。
合うかどうかは別として、な。
その日から、部活中に暇を見つけては日吉の観察をしてみたり、日吉と仲が良いらしい鳳から日吉の話をしてもらったり…日吉について間接的に関わる日々が続いた。
そんなある日。
「えーと、信長信長…」
日本史のレポートを書くのに本を借りようと思い、どデカイ氷帝の図書室でお目当ての本を探しているときだった。
「…歴史書は隣の棚にあるやつが分かりやすいですよ」
隣に立って本を物色していたんだろう男子にそう言われた。
声をかけられて反射的に振り向いてそこにあった顔に、思わず変な声が出た。
「ふへ?」
「ですから、歴史書は隣の棚の方が分かりやすいですよ」
俺の驚きの声を、聞き取れなかったから出た声だと思ったのか、さっきと同じことを繰り返して言った男子…もとい日吉。
数冊の本を抱えて隣に立っているのは、紛れもなく俺が最近気にしていた日吉若だった。
「…大丈夫ですか?」
「…あ、お、おぉ!教えてくれてサンキューな!」
「いえ」
初めて間近で見る日吉の顔をポカンと見つめていると、心配しているんだろう声がかかり、意識を日吉から現実に戻した。
言われた通り今見ていた棚の隣の棚を見つつ、日吉の様子チラチラ伺う。
日吉は棚から本を抜いてはパラパラ捲りまた棚に戻して、を繰り返していた。
「あ、あのさ、」
「はい?」
「日吉…だよな?」
「はぁ…そうですが」
今日ここで直接的に日吉に関わったのは、なんかの縁かもしれないと思い、相方の“岳人と日吉は合う”という言葉を信用して、日吉に声をかけた。
ぶっちゃけ、そこから先は何を話したのか記憶にない。
なんか無駄にテンパってたのは覚えてるけど。
「…向日さん?」
「…んあ?」
「意識飛んでませんでした?」
「あー…日吉と初めて話した日のこと思い出してた」
「あぁ、向日さんが1人でテンパって変質者みたいだった日のことですか」
「嫌味か」
「本当のことでしょう?」
「…クソクソ」
本当のことで反論出来ず、クスクス笑う日吉を睨み付けてやった。
睨み付けながら日吉をちょっと観察してみた。さっき思い返していた日吉より表情が豊かになった気がする。
1年…はまだ経ってない(半年ぐらい?)けど、人間って結構変わるもんだなーなんて思ってみたり。
「あーもークソクソ日吉!なんか奢れ!」
「なんで俺があなたに何かを奢らなきゃいけないんです?」
「ムカつくから」
「理由になってませんよ」
「だー!先輩の言うことを聞け!」
「とんだ俺様ですね、あんた」
ちょっと生意気でムカつくときもあるけど、なんだかんだいって優しい後輩。
今だって、ため息吐きながらも何が欲しいのか聞いてくるし。
そんな後輩と、これからも仲良くしていけたらなー、なんて思った。
後輩な君と先輩な俺
(よっしゃ、日吉!マック行くぞマック!)
(なんでマックなんですか…)
(なんかマックな気分なんだよ!お前に拒否権はないからな!先輩命令だ!)
(…はぁ…)
END
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謝罪
沙螺様…申し訳ありません…!
“日吉と岳人”のお話になぜか忍足が入ってきました…!
ほのぼのなのかも怪しいですし、似非キャラですし、忍足が無駄に張り切ってますし、忍足が無駄に張り切ってますし…。
苦情等ありましたら遠慮なくお申し付け下さい!
全身全霊、命を削ってでも修正しますので!(>_<)
それでは、リクエストありがとうございました!(^^)