“一緒に、逝こう。1人取り残されるのは、きっととても苦しいから”
そう言って悲しそうに笑ったアイツと、約束を交わした。
最後の最後まで生き延びて、一緒に逝こうと。


「…じゃあな」


ザクッやスパッといった漫画染みた効果音はなく、ただ肉を切る感触と飛び散る紅だけが広がった。
倒れた人間にちらりと目を遣り、その場からゆっくり離れた。


「……」


立ち込める鉄の錆びた様な臭い、木々に飛び散った紅。
転がる人のカケラ。

男子テニス部3年を全員巻き込んだこのゲームが始まって、2日が経った。
もう何人、あの世へ送ったのだろう。
あと何人、あの世へ送ればいいのだろう。

…何人でも構わない。
アイツと会うためなら、アイツとの約束を守るためなら、俺は何人でも葬ろう。


「…跡部…?」


ふと、声が聞こえた気がして足を止めた。
ぐるりと周りを見渡して、紅く染まった木々の向こうに、大切で愛しくて約束を交わした、アイツを見つけた。
目を丸くしてこっちを見ているアイツの服には、所々紅が散っていた。


「…宍戸…」

「…あの建物出てからは、会うの初めてだな」

「…そうだな」


小さく、困ったように笑ってそう言ったアイツに、緩く笑みを返した。
こんな状況下でも、愛しいと感じた。

何人もの血を啜ったこの手でアイツに触れるのは憚られたけれど、どうしても触れたかったから、近づいた。
…アイツの異変に、気づくことなく。


「宍戸、」

「跡部。あと何人このゲームに残ってるか知ってるか?」

「…知らねぇ」


俺の言葉を遮って、俯いた状態で問いかけたアイツに、どこか違和感を感じつつ返答した。
そして、アイツの頬に触れようと手を伸ばした瞬間、腹に感じた痛み。


「…なっ…」

「…教えてやるよ。生存者は、2名。俺とお前だけだ」


腹に突き立てられたナイフ。
ごぷり、溢れる紅。
薄く笑う、アイツ。


「俺さ、建物出て結構直ぐに跡部のこと見つけたんだ。それからずっと、跡つけてた」
「最初から、一緒に逝くつもりなんてなかった」
「俺はまだ、死にたくないから」


アイツの言葉が、頭の中で理解される前に抜け出ていく。
何を言っているのか、わからなかった。
…いや、理解したくなかった。


「お前といれて、楽しかったぜ。ありがとよ」

「…し、しど…っ」

「じゃあな」


どすっと腹に衝撃がきて、俺の意識は途切れた。
…動かなくなった俺を見て、宍戸が涙を流していたなんて、知るはずもない。


「…ごめんな、跡部。でも俺がここで生き残らねぇと…若や長太郎や樺地が巻き込まれることになっちまうんだ…」
「嫌われ役は…裏切り者は、俺でいい。お前はどうか…」




優しい君のままでいて
(裏切ってごめん)
(騙してごめん)
(でも俺は、)
(ずっと君を…愛しています)


END
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