当たり前だったあの人たちの存在。
だけど、もう二度とあの人たちには会えない。
当たり前なんて、あるはずないとわかっていたのに…。



1年前のあの夏の日、丁度全国大会が終わって、先輩たちが引退したすぐ後の事。

俺は、幸村部長から信じられない…いや、信じたくない話を聞かされた。


「幸、村部長…今の話…嘘ッスよね…?」

「…本当だよ。俺たち立海テニス部の3年生は…バトルロワイアル法に選ばれた」

「そんな…っ!」

「赤也。俺たちは誰も殺したくないんだ。…この意味、わかるよね?」

「…部長…」


(それは…もう二度と先輩たちに会えないって意味ですか…?)


「赤也に、すごく重い物背負わせちゃうね…ごめんね。でも、わかってほしいんだ、俺たちの気持ちを」


幸村部長はそう言って悲しそうに微笑むと、俯く俺の頭を撫でた。


「ねぇ、赤也。俺たちはきっと帰って来ない。だけど覚えていて。俺たちは…」












「切原部長ー!」


後輩の声に、俺は“あの日”から現実に引き戻された。


「なんかあった?」

「…副部長が…顔面にテニスボールが当たって…泣いてます…」

「・・・わかった、すぐ行く」


…先輩。
立海は今日も平和ッス。

…最初の頃は、先輩たちがいないことがすごく辛かった。…もちろん、今も辛いんスけどね。だけど、俺は先輩たちの分もテニス頑張って、全国優勝してやるって誓ったから…だから…


(俺は、こんなとこで立ち止まるわけにはいかない)


先輩たちのいない毎日は、ポッカリ穴が空いたみたいに寂しいけど、あの日幸村部長が言った言葉を頭に刻んで、しっかり歩いていきます。


「ぎゃぁぁぁ!切原部長ーっ!助けて下さいー!副部長がぁぁぁぁ!」

「テメェェェェェ!俺の顔に傷つけやがって…絶対許さねぇからなーっ!」

「本当悪かったって思ってますから!だから…カッター振り回さないで下さいーっ!てかどっから出したんですかそれ!」

「…アイツら…人がいい感じにシリアスになってんのに…」


個性の強い奴ばっかりでまとめるのが大変ッスけど…


「お前ら!部活をしろ、部活を!」


先輩たちを心配させないように、頑張るッスよ。





鎮魂歌
(先輩たち)
(俺、すっげぇ)
(頑張ってるっしょ?)


END



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