好きだった。
向日葵の様な笑顔を浮かべる君が。
優しく名前を呼んでくれる君が。
気がついたらいつも目で追っていた。
俺の視界には、いつだって君がいた。


「…ブンちゃん」

「…に…お…」


好きなんてちっぽけな言葉じゃ伝えきれない気持ち。
愛してるなんてありふれた言葉じゃ足りない気持ち。
誰よりも、何よりも、君を心から想ってる。
それなのに君は、俺の想いにちっとも気づかない。


「俺は、誰よりもブンちゃんを想っとる。“好き”なんかじゃ“愛してる”なんかじゃ足りんくらい、ブンちゃんのことを想っとるんじゃ」


そればかりか、君はいつもアイツのことばかり。
アイツのことばかり話して、アイツばかり、愛しそうに見ていて。
俺は“友達”なんていう小さなな枠に入れられて。

こんなにも君を想ってるのに。
アイツなんかよりも君を想ってるのに。
どうして君は俺じゃなくてアイツを見る?
どうして俺よりもアイツを愛す?
俺の方が、君を幸せに出来るのに。
俺の方が、君を想ってるのに。

俺の想いの妨げになるアイツなんて…いらない。


「……よぃ…」

「なん?」

「だからっ…だから赤也を殺したのかよぃ!?」

「そうじゃよ?」


下から睨み付けてくるブンちゃんの目に宿っているのは憎悪。
こんな目で見られたんはいつぶりかのぅ…なんて、暢気に考える俺は本当にイカれてる。


「俺は…仁王のこと…親友だと思ってた…」

「俺は一度もブンちゃんを親友だなんて思ってことなか」

「…っ…」

「…いつだって、ブンちゃんは俺の1番だった」


俺にとって君は1番だった。
でも君にとっての1番は俺じゃなかった。
俺は君の1番にはどうしたってなれないんだと諦めてた。…このゲームが始まるまでは。


「本当は…祈っとった。ブンちゃんがアイツと幸せになれるように。けど、やっぱり諦めきれんかった。…だから、このゲームが始まったとき、チャンスだと思った」


…アイツから、ブンちゃんを奪うチャンスだと。
だから、アイツの命を真っ先に奪った。
アイツからブンちゃんを引き剥がした。
アイツからブンちゃんを、奪った。


「…っ…俺は、確かに赤也が好きだった。けど!赤也と同じぐらい仁王も好きで、大切だった!3人でいるのが、楽しかった!」

「…俺は苦しかった。3人でいるときも、2人でいるときも、苦しかった」


好きな人と、大切な後輩。
2人の幸せを祈りたいという気持ちもあった。
けど、それ以上に君を求めてた。君を想ってた。想ってしまった。


「…俺がいなきゃ仁王は苦しまなかった?俺がいなきゃ赤也は死ななかった?俺がいなきゃ、みんな幸せだった?」

「!ちがっ…」


違う。そうじゃない。
ブンちゃんのせいじゃない。ブンちゃんは悪くない。
悪いのは、悪いのは…


「…苦しめてごめん、仁王。…ごめんな…」

「ブンちゃ…!」


バンッ―…!


悪いのは、歪んだ俺の気持ちなんだ。
悪いのは、全部俺なんだ…。


「…っ…」


…好きだった。
向日葵のような笑顔を浮かべる君が。優しい君が。
誰よりも、何よりも大好きで、大切だった。

…なのに、俺が、奪ってしまった。
君の向日葵のような笑顔も、俺の名を紡ぐ優しい声も、真っ直ぐな瞳も、何もかも、俺が、奪ったんだ。


「…ごめん…ごめんな、ブンちゃん…っ赤也…!」





片恋
(俺の想いは、)
(大切な人を奪い、)
(大好きな人を奪い、)
(たくさんのものを、苦しめた)


END



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