フラジオレット | ナノ







「いいかげん決めてもらわないとねぇ」
「…俺も、ハッキリしねぇのは好きじゃねぇんだ」
「いつもはぐらかされてたけどさ」
「静雄さん、今回ばっかりは俺もマジッすよ」



 おかしい。どう考えてもおかしい。ただでさえ賢くねぇのに俺の頭はいつになくパニックだ。パニックながらも給料前でピンチな財布から搾り出した千円札で買ったアメスピの最後の一本を取り落とさなかったあたり頭の隅っこは冷静なようだ。

 奇妙なことに現在俺の目の前には四人の人間が……いや、正確には三人の人間と一匹のノミ蟲がいる。左から順番にノミ蟲、門田、六条、紀田…なんで勢ぞろいなのかは俺が聞きたい。




「静雄さん、俺、本気っすよ。いつもみたいな軽口じゃない、」



 するり、紀田が首に巻いていた布を解いた。何でこいつ黄色い布なんて巻いてんだ、まるでカラーギャングみてぇじゃねぇか。違う、そんな危ないもんじゃねぇ、俺の知ってる紀田は、幼馴染思いで、ちょっと軟派で、告白だってなんだって本気だか冗談だかわからねぇようなことを言うヤツだった。それなのに今は、見たこともないような、真剣な目をしている。



「俺、静雄は本気みてぇだ。いや、他の女の子も本気だけどさ、まぁ、全部なげうっていいぐらいには本気だぜ?」



 だから俺と付き合いませんか?なんて一輪のバラと共に微笑んだこの男は物語の世界から出てきたか何かなのだろうか。だったら俺が四度殴っても立ち上がったのにも納得がいく。確か名前は六条…千景?いや千秋だったか?俺が名前を覚えてねぇってことはたぶんニアミスぐらいしかしてねぇんだろうが、コイツはなんでそんなに俺に熱心なのか。



「男なら…いや、男だから迷ってんだろうけどな。…悪ぃけど、俺もあんまり気は長くねぇんだ」



 この面子の中で唯一助けを求められそうな門田ですらコレだ。いつものお前はどこだ、いつもの帽子はどこへやったんだ。あぁ、今はそんな瞳は欲しくない、のに、って何で照れてんだ俺はホント落ち着いてくれ俺も門田もあぁちくしょう。



「思わせぶりな態度はやめて欲しいよねぇ。ホント、俺が一番だって早く言えばいいのに」



 なんでコイツはこんなに自意識過剰なんだマジで意味がわからねぇ理解不能だ死ねノミ蟲その手をどけろ。




「ねぇシズちゃん」
「静雄」
「俺に決めろって」
「さぁ、静雄さん」



 やめろ、くるな、なんたってお前らはそんなに息ぴったりなんだ、どん、壁、壁だって?そんなばかな、もう、にげられ、な、






「おーい静雄ー、そろそろ休憩終わんぞー」






 ぴくり、目の前の三人と一匹が同時にその動きを止める。俺はしめたとばかりに壁とノミ蟲の間をすり抜けて眩しく光る路地の出口、俺を呼ぶトムさんの下へと駆け寄った。
























(とむさあああああああああん!!!!)
(うぉっ?!なんだどうした静雄?!?!)























オオカミさんにご用心


(でも赤頭巾ちゃんには猟師さんがついてるんですよ、コレホント)













101107

……………………

実はむかーしむかしに別ジャンルでこそこそ書いていたのを手直ししただけとかごにょごにょ。静雄さんが愛されていればそれでいいのですたとえ周りがおほもだちだらけというパラレルな空間でも!

静雄さんのピンチにはトムさんが出現するというのが我が家のテンプレートらしいですトムさんマジカッコいい。











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