フラジオレット | ナノ





※洋食屋パロディ
※常連客臨也×店主静雄






















 カラン。



「いらっしゃ…」
「やぁ、シズちゃん」
「…また来たのかテメェ」
「貴重な常連客なんだからさ、そんな嫌そうな顔しないでよ」



 小さな洋食屋に取り付けられた木製のアンティークなドアのベルを鳴らし、俺が店に入るとシズちゃんはあからさまに眉根を寄せて出迎えてくれた。もう既に何回も訪れているのに、コレばっかりは治らない。彼がしかめっ面以外で俺を出迎えてくれたのは一度だけ、はじめてこの店に来たときだけだ。まぁ、いきなりカウンター越しに「セックスしよう」とか言った男に対しては正しい反応だと思う。



「注文は」



 迷いない足取りで奥から二番目のカウンター席(ここが一番コンロに近いから、別名料理中のシズちゃんに一番近い席)に腰掛けると、彼はぶっきらぼうにそれだけ言った。俺は頬杖を付いてそんなシズちゃんの顔を眺めながら優柔不断に呟く。



「んーどうしよっかなぁ…和風もいいけどミートソースもいいなぁ…まぁ、シズちゃんが作ったものなら何でもおいしけd「ナポリタンだな」



 どうやら迷っているふりをして彼を引き止めておく作戦は失敗に終わったらしい。シズちゃんは俺の言葉を遮ると、くるりと後ろを向いてフライパンに油を敷いた。ここからの彼はだんまりだ。衛生上とか言って料理してる間は絶対に喋ろうとしない、そんな彼のポリシー。俺は溜息をついた。



「しかし…相変わらずガラガラだねぇ…」



 ぐるりと見回せば、店内には俺一人しかいなかった。狭い洋食屋、テーブル席が二つにカウンター席が7席。シンプルな内装、シンプルなメニュー、それからそっけない店主。彼らしさが全面に現れたこの空間が俺は好きだった。気付けば足繁く通って、毎日パスタ三昧の日々。



「ホントはパスタなんかよりシズちゃんをいただきたいところなんだけどね」
「ナポリタンお待ち」



 ガンッ、と薄い陶器の皿が鈍い音を立ててカウンターテーブルに置かれた。最小限の動きと最小限の発言で目の前に叩きつけられた白い皿には、相変わらず食欲をそそる彼手製のナポリタンが湯気を立てている。そんな注文の品を一瞥して視線をキッチンへと戻せば、彼はこちらに背を向けて次の作業へと取り掛かっていた。白いコックコートの背中を見つめながら俺は溜息をついて、備え付けのフォークをパスタに差し込む。





「ま、毒盛られてないだけ愛されてると思えばいいのかな」





 口に運べば、少し固茹でな麺に絡んだケチャップの甘い香りが広がる。嫌いだと言ったパセリが見当たらないことに機嫌を良くした俺は、どうにも締まらない顔で忙しそうに動く金髪を見つめていた。



















(さて、食事も終わったことだし、俺とおしゃべりでもしませんか?)



















アルデンテに想いを込めて





100802

……………………
ついったで呟いていた洋食屋店主静雄とストーk常連客な臨也。実はシズデレ。麺がアルデンテなのは早く料理を終わらせて臨也と喋りたかったから、とか。伝わらない(苦笑)

しかしパロディ率の多い拍手お礼である。










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