フラジオレット | ナノ





※新羅がずっとしゃべってるだけ
























 静雄?君が言うのは彼の有名な池袋の自動喧嘩人形、平和島静雄くんのことかい?あぁ、もちろん彼なら知っているよ、なんたって僕も少なからず興味を抱いている人間の一人だからね。ん?どういう意味かって?言葉のままだよ、ただ純粋に、彼には興味がある。素手で道路標識を引っこ抜き、トラックに跳ねられても平気で立ち上がる。彼の身体は実に興味深いね。膂力は人類のそれを優に越えているし、四百四病には縁が無い、それこそ生命力なんかは魑魅魍魎の類だ。いや、あくまで魍魎の生命力は想像の域を出ないんだけど。麻酔無しで解剖出来るぐらいには強いんじゃないかな。痛みの具合はよくわからないけど。セルティは『思い出したくもない』って言ってたけど、セルティは魍魎の類じゃないから参考にならないかな。彼女は天使だよ、エンジェル。地上に舞い降りたヴァルキリー。強く優しく美しい、才色兼備な彼女にはこの表現がぴったりだとは思わないかい?あぁ、話が逸れたね。どこまで話したっけか。とにかく、平和島くんは生命学者や医者にはたまらない、一度は解剖してみたいまさに逸材だね。だから僕は彼に興味がある。それに、小学校高校といっしょだったから腐れ縁みたいなものも感じてるよ。ちなみに、彼があの馬鹿力を初めて行使したのも小学生の頃だったみたいだね。あの頃から僕は身体を壊して入院している彼の元に足繁く通っては一度解剖させて欲しいと頼んだものだよ。いやぁ、尋ねる度に尺骨をひねり上げられて痛い思いをしたんだ、懐かしいな。そんな思いをして尚も僕は平和島くんを諦めきれないでいる。それほど魅力的な身体の持ち主なんだよ、彼は。え?なんだか卑猥な意味に聞こえる?あははは!私が、あの静雄を、そんな目で見ているようにみえたのかい?確かに静雄は身内に芸能人を持つだけあって綺麗な顔はしているよ。黙っていれば眉目秀麗と言ってもいい。長身だし、女の子が好きそうな細身の筋肉質だ。だけど、ふふ、私が、あの平和島静雄を?ははは、あぁ、面白い冗談だったよ。あんまり面白いから想像しちゃった。俺が静雄を押し倒して、彼は頬を赤く染めて、それから、涙を目に、唇を、あれ?おかしいな。いや、うん、あれ、おかしいな、うーん、ごめん、ちょっと興奮して来ちゃった。なんでだろうええっと、金髪がシーツに良く映えて、いや違うそうじゃないええっと。なんでだろう。僕は静雄くんを解剖したいから興味があるわけで、ベッドに横たえるのは医療行為と生物学以外の意味はないわけで。そう、解剖。静雄くんは化け物じみてる。僕は昔から人間を逸脱したようなものが好きなんだ。セルティが好きなんだ。いや、セルティは化け物なんかじゃない、セルティだからいいんだ。セルティだから好きなんだ。だから静雄くんは解剖したいから、その顔を苦痛に歪めてみたいから、静雄くんだから、あれ違う、僕は何を言ってるんだい?え?僕が静雄くんを好きなんじゃないかって?ははははは、君は実に単刀直入だね。そんな君に出来るだけ実直な返答をご用意してあげたいんだけど、お生憎様、どうやらお約束の展開みたいだよ。さてさて、扉を開けた瞬間にすることだけど、筋弛緩剤注射と睡眠薬投与、どっちがいいと思う?

























(いらっしゃい、静雄くん)





















「それは恋ですか?」





100826

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新→静で新羅が恋心に気づきました編。インタビュー風味というか対話風味をめざして玉砕…うん。分かりづらいですが、ラストは新羅宅のドアを静雄さんが叩いたようです。新羅も大概外道なことを平気でやると思うんだ…お薬使うのに抵抗なさそうですよね…。

お粗末さまでした><










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